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あらすじ
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』での行動により、自宅軟禁生活を送るスコット・ラング。
ヒーローとしての活動から距離を置き、娘との時間を大切にしようとしていた彼のもとへ、ハンク・ピムとホープ・ヴァン・ダインから新たな協力要請が届く。二人は、かつて量子世界へ消えたジャネット・ヴァン・ダインを救出するための研究を続けていた。
スコットは再びアントマンとして活動し、新たにワスプとなったホープと協力。サイズを自在に変化させる技術を巡って複数の勢力が入り乱れる中、量子世界へつながる手掛かりを追っていく。
作品レビュー
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』での行動により、ヒーロー活動の代償として自宅軟禁中のスコット・ラング。
前作以上に強く描かれるのは、ヒーローとしてのスコットよりも父親としてのスコットだ。彼にとって最優先なのは世界を救うことではなく、娘キャシーとの時間を守ること。自宅軟禁の期限をなんとか無事に終えたいという、MCUとしてはかなり小さな目標から物語が始まる。
そんな中で再び関わることになるのが、ハンク・ピムとホープ・ヴァン・ダインによるジャネット救出計画。
前作では謎の多かった量子世界が本格的に掘り下げられ、単なる不思議な空間ではなく、後のMCUにも大きく関わっていく重要な要素へと発展していく。
そして本作では、ホープが正式にワスプとして活動。飛行能力を持ち、戦闘技術もスコットより明らかに洗練されており、どこか勢い任せなアントマンとは対照的。二人の能力差がそのままコンビとしての面白さになり、軽快なアクションにつながっている。
サイズ変化の使い方も前作からさらに広がり、人物が小さくなったり巨大化したりするだけでなく、車や建物、さまざまな物体まで自由にサイズ変更。
サンフランシスコの坂道を利用したカーチェイスでも、車を縮めたり元に戻したりしながら走り回ることで、普通の追跡劇とは全く違うものになっている。こうした縮小・巨大化はアクションだけでなくコメディにも積極的に使われ、スコットのサイズが思うように安定しない場面など、前作以上に笑いへつなげている。
一方で、今作のヴィランであるゴーストことエイヴァは単純な悪役ではない。特殊な能力は本人にとって大きな苦痛でもあり、彼女が求めているのも世界征服ではなく、自分を救う方法だ。ビル・フォスターとハンクの過去や、科学者同士の対立も絡み、敵を倒せば終わりという物語にはなっていない。
スコットとキャシー、ハンクとホープ、さらに失われた家族を取り戻そうとする人物たち。立場は違っても、それぞれが家族のために動いているという共通点があり、世界滅亡よりずっと個人的な目的が物語の中心に置かれている。
同じ2018年公開の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』とは正反対で、規模は小さく、雰囲気も明るい。
前作でも活躍したルイス、デイヴ、カートの三人も再登場し、スコットの仕事仲間として相変わらず賑やかに物語をかき回してくれる。さらに、自宅軟禁中のスコットを何度も確認しにやってくるFBI捜査官ジミー・ウーも、真面目なのにどこかズレたやり取りで笑いを加える存在になっていた。
MCU全体が徐々に重くなっていた時期だけに、コメディ色の強さと軽快なテンポには箸休めのような安心感がある。
派手な世界の危機ではなく、家族と身近な問題を中心に描きながら、サイズ変化というアントマンならではのアイデアをさらに広げた、気軽に楽しめるMCU作品だった。
メタデータ
映像レビュー
サイズ変化とIMAX拡張を活かした独特の映像表現
十分に高画質と言える4K/Dolby Vision映像。
撮影にはARRI ALEXA 65を中心に、ALEXA MiniやALEXA SXT、Panavision Millennium DXLなど複数のデジタルカメラを使用。ALEXA 65では6Kを超える高解像度素材で撮影されているが、最終的なDigital Intermediateは2Kで制作されているため、4K映像はそこからのアップスケールとなる。
それでも元となる撮影素材の良さもあってか、不自然な処理感はなく十分に精細。
今作はカーチェイスを中心にサンフランシスコの街や観光地も登場するが、明るいシーンでは人物から遠景までしっかりした解像感がある。アップではアントマンやワスプのスーツに刻まれた細かな模様まではっきり確認でき、街並みも大きく潰れることなく描写されている。
作品全体を通して明るく、晴天の屋外シーンがメインで、暗闇のような場面はかなり少ない。軽快なコメディ色の強い作風ともよく合っており、見通しの良い映像が中心。
その中で一際目立つのが量子世界。幾何学的な形状と独特な色彩に満ちた空間は非常に鮮やかで、普段のサンフランシスコとはまるで別世界。アントマンやワスプのスーツは比較的抑えたカラーリングだけに、量子世界へ入った瞬間の派手さがさらに際立つ。
ゴーストが物体をすり抜ける際に残す分身のような残像、車や研究所が一瞬で拡大・縮小する表現、量子世界に存在する奇妙な生物なども独特。都市を破壊するような派手なVFXとは方向性が違うものの、サイズ変化そのものを映像表現として遊ぶアントマンシリーズならではの見せ方で、他のMCU作品とはかなり違った個性がある。
IMAX Enhancedでは通常の2.39:1から、一部のアクションや量子世界で1.90:1へ上下が拡大。カーチェイスや量子世界のスケール感が増し、作品の見せ場ではしっかり大画面を活かしてくれる。
相変わらず世界規模ではなく、一つの街を中心に展開する小さな物語だが、サイズ変化と量子世界を活用した映像は非常に楽しい。アップスケール4Kではあるものの、映像面でも十分に見応えのある一本だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
スコットの巨大化や量子世界での表現は悪くない。
DTS:XだとAtmosの一段上に。
終盤のチェイスシーンや量子世界への出入りなどは派手に。
アリの作業音や、街中などささやかにサポート。
ピンポイントな使い方で、頻度はそこまで多くない。
しっかりした迫力を備えたDTS:X音声。
内容的には他のMCU作品ほど派手な超人同士のバトルが続くわけではないが、それでも格闘戦の打撃には十分な強さがあり、アクションシーンでの物足りなさは少ない。手元環境での比較では、今回もAtmosよりDTS:Xの方が約3dBほど大きめで、MCU作品でこれまで感じてきた傾向に近い。
アントマンらしく、動きに合わせたキレのある効果音に加え、物体が一気に拡大・縮小する独特なサウンドが特徴。巨大化した時にはしっかり重量感が加わり、逆に小さくなった時には素早く軽い動きへ切り替わる。派手な能力を持つヒーローでありながら、格闘そのものは比較的現実に近い動きなので、打撃音との相性も良い。
量子世界への出入りでは空間全体を包み込むような音場が広がり、終盤のサンフランシスコでのカーチェイスではマルチチャンネルをしっかり活用する。車が前後を駆け抜ける移動感やクラッシュ、巨大化したアントマンの動き、縮小した車の真上を通常サイズの車が通過していく場面など、サイズの違いまで音の位置と重さで感じられるのが面白い。
トップスピーカーの使用頻度そのものは多くないが、頭上を通過する物体や巨大化したキャラクターの動きなど、必要な場面では高さ方向もしっかり使う。
前作では飛行するアリたちが音場を動き回る場面も多かったが、今作ではワスプが本格参戦したことで、アリはどちらかといえばサポート役。前作ほど小さな音が周囲を飛び回るようなサラウンドは目立たない。そのため終盤以外は、リアやトップが時折反応する程度の比較的落ち着いた音作り。
それでもMCUらしく、クライマックスへ入ればしっかり派手になり、映像と合わせて十分な迫力を作り出してくれる。
作品そのものの軽快さに合わせながら、アクションではきちんと力強さを出す、安定したクオリティのDTS:Xだった。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
ソニーと取引
ワスプの活躍。打撃と銃撃でサラウンドは少し。
量子世界とカーチェイス
量子世界の独特の響きと広がり、拡大縮小を活かしたサンフランシスコ巡りが見もの。
総評
MCUでのコメディ担当とも言える、アントマン単独シリーズの第2作。
技術的にはかなり高度な能力なのに、どこかコミカルに見える拡大縮小の使い方がさらに広がり、アクションだけでなく日常シーンでも前作以上に活用されている。中でも研究所そのものを縮小して持ち運ぶアイデアは、まさに本作らしいもの。スーツケースのように持ち歩く姿には、ハイテクなのにどこか抜けたアントマンらしい雰囲気がある。
前作から続くルイス、デイヴ、カートの三人も再登場し、防犯会社を立ち上げながらスコットをサポート。状況が厳しくなっても、ちょっとした笑いを忘れない明るい空気は健在だ。
映像面ではIMAX Enhancedに対応し、アクションや量子世界でのスケール感が向上。量子世界そのものの描写も増え、前作から確実にパワーアップしている。DTS:X音声も、量子世界への出入りや終盤のカーチェイスでしっかり活用され、Atmos版より迫力の面で一段上に感じられた。
物語は家族、特に親子関係を強く意識した内容で、ヴィラン単体の存在感はそれほど前面に出ない。それでも軽快なテンポで最後まで駆け抜け、明るくまとまったかと思えば、最後にはしっかりMCU全体へつながる要素を残してくる。
タイトル通り、アントマンとワスプによるダブル主人公のバディものとしての要素も強く、世界を救う大作とはまた違った魅力を持つヒーロー映画だった。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
