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あらすじ
昼は会社員、夜はハッカーとして活動するトーマス・アンダーソンは、自分が生きる世界にどこか違和感を抱いていた。
“ネオ”という名でネット上をさまよう彼は、ある日、謎の女性トリニティーと、モーフィアスと名乗る男に導かれる。そこで知らされるのは、これまで現実だと信じてきた世界そのものを揺るがす事実だった。
真実を知ったネオは、自分が何者なのか、そして何を選ぶのかを迫られていく。現実と仮想世界が交錯する中、人類の未来を懸けた戦いへ足を踏み入れるSFアクション。
作品レビュー
『マトリックス』の強烈さは、「自分が現実だと思っていた世界そのものが偽物かもしれない」という発想から始まる。
会社員として日常を送りながら、どこか世界に違和感を抱いていたネオ。真実へ近づくにつれて、当たり前だと思っていたものが次々と崩れ、自分自身の役割まで受け入れていく過程が物語の中心になっている。
キャラクターの個性も非常に強い。中でもモーフィアスのぶれない信念とカリスマ、そしてエージェント・スミスの無機質で不気味な存在感は特に印象的だった。どちらもネオとは違う方向から物語を引っ張り、世界観そのものを象徴するような人物になっている。
仮想世界と現実世界を明確に対比させる構造も巧く、マトリックス内部では緑がかった色調を使うなど、視覚だけでもどちら側にいるのか分かる。コード、電話、黒いコート、サングラスといったデザインも非常にアイコン性が高く、今見ても一目で『マトリックス』だと分かる。
そして映像史に残るバレットタイム。当時としては革新的だったこのVFXに、カンフー、ワイヤーアクション、銃撃を融合したことで、それまでのハリウッドSFとは全く違うアクションが完成した。特にロビーでの銃撃戦は、スローモーションを多用した破壊表現、動き、音楽のすべてが噛み合い、今見ても強烈な迫力がある。
1999年の作品ながら、ネット、仮想現実、AIを中心に据えた世界観もかなり先進的だった。現在は生成AIが身近になり、AIが大量の情報から自己学習する時代になったことで、映画のような未来とはまだ大きな隔たりがあるにしても、以前よりSF設定を現実に近いものとして考えてしまう。
その一方で、本作が扱うのは技術だけではない。「現実とは何か」「自由とは何か」、そして何度も迫られる「自分で何を選ぶのか」というテーマが根底にある。哲学的な内容を持ちながら、それを難解な作品にせず、最後まで娯楽性の高いSFアクションとして成立させているのが素晴らしい。
工業的なサウンドや音楽、90年代末らしいサイバー感も、今では古さより強烈な個性として残っている。バレットタイムをはじめ、その映像やデザインは後の映画、ゲーム、アニメ、CMへ大きな影響を与えた。
続編へ繋がる余地を残しながら、一作だけでも綺麗に完結しているのも良いところ。
久しぶりに見ると意外なほど古さを感じず、むしろAIが現実の生活へ入ってきている今だからこそ、以前とは違った印象で見られる。他では代わりの利かない、強烈な個性を持ったSF映画だった。
メタデータ
映像レビュー
深い黒と緑の色調が際立つ独特のDolby Vision映像
1999年作品としては、かなりしっかりアップデートされた4K/Dolby Vision映像。
顔のアップなど近景では甘さが少なく、輪郭や肌の質感までかなりくっきり見える。フィルムグレインはしっかり残っているものの、その中でディテールが潰れず、年代を感じさせながらも4Kらしい解像感を得られているのが良い。特徴的な黒い衣装も、素材や光沢の違いまで見分けやすい。
一方で、遠景にはやや甘さが残り、VFX主体と思われる場面も現代作品ほどシャープではない。ただ、30年近く前の作品であることを考えれば大きな欠点とは感じない。
それより印象的なのが暗部表現。黒がかなり深く、普段の設定では見づらく感じるほど暗い場面がある。すべてが一様に沈んでいるわけではなく、VFX主体の場面では見通しが良いため、かなり意図的な画作りにも見える。その反対に、白一色の空間では眩しさを感じるほど明るく、視覚的なコントラストはかなり大きい。
そしてやはり象徴的なのが、マトリックス内部の緑がかった色調。冒頭のコードと同じく、世界そのものを象徴するカラーとして機能しており、現実世界との違いを視覚だけで分からせる。この効果は今見ても非常に印象的で、作品独自のサイバーパンクな雰囲気を強く支えている。
VFXには年代を感じる部分もあるものの、バレットタイムや銃弾の軌道を視覚化する表現など、技術以上にアイデアそのものが強い。
多少の甘さは残るが、4K化の恩恵は十分。独特の色彩と世界観まで含めて、内容だけでなく映像そのものにも強い魅力を持った一本だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
強すぎず、世界観を支える良い重さ。
十分すぎる迫力。特に銃撃が良い。
最後のシークエンス以外は包囲感の方が強め。
あるにはあるが、会話やBGMの方が目立つ。
かなり多様な使い方をしている。
映像以上に進化を感じる、非常に完成度の高いDolby Atmosアップデート。
本作はもともと、バレットタイムに代表されるように、映像と連動して音が周囲を移動するサラウンド表現が特徴的だった。銃弾の軌道に合わせて音が回り込むような演出は、今聞いてもかなり印象に残る。
そこへAtmos化による高さ方向の情報が加わり、立体感は大きく強化されている。
トップスピーカーの使い方はかなり多彩で、雷のような定番表現だけでなく、人物が上方向へ移動する場面、ビルの裏側にいるキャラクターの声や動き、ホバークラフトの軋み、ヘリコプターの移動、センティネルの襲撃など、場面ごとに異なる音が配置される。ここまで幅広く高さを使う作品は意外と多くない。
リアスピーカーの活用も積極的。コードの広がるような電子音、銃撃戦、移動音などが周囲へ展開され、包囲感はかなり強い。
特に終盤の一連のアクションは今聞いても派手で、音質の古さもそれほど感じない。聞きどころだけでなく、通常のシーンでもサラウンドを使う場面があり、常に空間を意識したミックスになっている。
ダイナミックレンジも大きく、銃声や爆発には十分な威力がある。そこへBGMが重なることで、アクションシーンの印象はさらに強くなる。
もともと優秀だったマルチチャンネル音声に、Atmosによる高さ方向を加えたことで、作品の立体感をさらに引き上げた非常に良いリミックスだった。
古い作品だからと敬遠するにはもったいない。映画としてだけでなく、音響面でも大きな意味を持つ作品として、ぜひAtmos環境で楽しみたい一本だ。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
トリニティのミッション
緑のコードがとても気持ちいい。銃声やトラックも迫力あり。
現実の世界へ
目覚めた世界の電子音や包囲感はかなり強い。
サイファーの裏切り
壁裏に隠れている時が一番サラウンド。トップもよく使う。
モーフィアス救出へ
最後までサラウンドの要素全部盛りみたいなシークエンス。
総評
最初に観たのは映画館ではなくDVDだったが、弾丸を避ける動きや黒ずくめの衣装、独特の世界観が強烈に印象へ残った作品だった。
スローモーションを多用したカンフースタイルの戦闘、俳優の周囲をカメラが回り込むような見せ方、そしてバレットタイム。今見ても非常に個性的で、その後の映画、ゲーム、CMなどへ与えた影響の大きさにも納得できる。
日本ではPS2の普及とともにDVDが一気に身近になった時代でもあり、『マトリックス』はその象徴的なソフトの一つだった。家庭で繰り返し見られる映像作品としても存在感が大きく、銃弾を避ける動きが色んなところで真似さていた記憶がある。
当時はサラウンドのことなど意識していなかったが、改めて見ると元の5.1chからかなり立体的な音作りがされており、Atmos化によってさらに高さと広がりが加わっている。映像だけでなく音響面でも、今のホームシアター環境で十分楽しめるアップデートだった。
商業的に大成功した作品ではあるが、1999年という時代を考えると、むしろ今の方がその独創性を強く感じる。電子機器や小物には時代を感じても、仮想世界、AI、選択というテーマや、キャラクターの強烈な個性はほとんど古びていない。
映画史に名を刻んだシリーズの一作として、4K/Dolby Vision/Dolby Atmosで改めて体験する価値は十分にある。個性に溢れた世界観と革新的な映像表現を、今のホームシアターで楽しむのもかなりおすすめだ。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
