作品データ
あらすじ
1969年、小さな町ラドローを離れようとしていた青年ジャド・クランドールは、帰還兵となった幼なじみの異変をきっかけに、町に古くから伝わる”死者を蘇らせる墓地”の恐ろしい秘密と向き合うことになる。
仲間たちとともに町を覆う呪いの正体を探る中で、やがて代々受け継がれてきた因縁や埋もれた過去が明らかになっていく。
『ペット・セメタリー』(2019)の前日譚として、呪われた土地の起源とジャドの若き日々を描くホラー作品。
作品レビュー
『ペット・セメタリー』(2019)へと繋がる前日譚として、若き日のジャド・クランドールと、彼を町へ縛り付けることになった事件を描く作品。
物語の中心となるのは、町を離れて新しい人生を始めようとしていたジャドと、その恋人ノーマ、幼なじみのマニーたち。さらに、戦地から戻ったとされるティミー・ベイターマンの異変を通して、ラドローの土地に代々受け継がれてきた秘密が明かされていく。
本作では、死者を蘇らせる墓地だけでなく、町の開拓時代まで遡って土地の歴史を説明している。死者は元の人格を保ったまま戻るのではなく、土地に潜む邪悪な力に侵され、生前の記憶を利用して人々を傷つける存在へ変わってしまう。単なる蘇生ではなく、悪意を伴う別物として帰ってくることが、この呪いの本質なのだろう。
また、2019年版でも印象的だった先住民族の仮面が再び登場し、この土地が古くから人々に恐れられてきた場所であることを感じさせる。劇中で詳しく語られることはないものの、代々受け継がれてきた伝承や信仰が、呪われた墓地の歴史へ厚みを与えていた。
ただし、肝心のティミーについては少々描写が駆け足だ。
父親が遺体を墓地へ運び、蘇生させたこと自体は冒頭で示されるものの、彼が命を落とした経緯や、復活後にどのように変化していったのかは十分に掘り下げられない。物語の中心人物であるだけに、父親が禁忌へ手を出すまでの葛藤も含め、もう少し丁寧に描いてほしかった。
前作では、娘を取り戻したいという家族の切実な願いが最悪の結果へ繋がり、その絶望が強烈に残った。それに対して本作は、町の住民たちが集団で怪異へ立ち向かう構成のため、個人的な喪失や悲劇の重さは薄い。
ノーマが捕らえられる展開も同様で、ティミーは彼女をすぐには殺さず、縛り上げて泥のたまる穴へ放置する。そこまで容赦なく他人を襲っていたのに、脱出の猶予を与えるような回りくどい演出に見え、異形としての恐ろしさを弱めてしまったように感じた。
さらに疑問が残るのはジャドの扱いだ。これほど大きな犠牲を目の当たりにし、墓地の危険性を身をもって理解したにもかかわらず、後の2019年版ではルイスへ埋葬場所を教えてしまう。
ルイスに出会うまで長い時間が経ってはいるが、これほどの経験をしたのなら、禁忌を犯すのは不自然に思えてしまった。
本作では、ジャドが町に残り、土地の秘密を守る役目を受け継ぐ流れが描かれる。
制作側としては、原作にある「邪悪な力が長い年月をかけてジャドへ入り込んだ」という解釈へ繋げたかったようだ。しかし映画だけを見ると、その影響は明確に描かれておらず、慎重に守り続けた人物がなぜ最後に同じ過ちへ導くのか、十分な説得力があるとは言い難い。
呪われた土地の歴史や若きジャドの背景を広げた点は興味深いが、前日譚として本編との繋がりを強めるには、人物の感情と行動をもう一段掘り下げる必要があった。世界観を補完する材料は揃っているものの、恐怖と絶望の濃さでは前作に及ばず、惜しさの残る作品だった。
メタデータ
映像レビュー
美しい田園風景と呪われた土地を、高精細な4K映像で描き出した映像美
映像は非常に素晴らしく、前作から確実な進化を感じられた。
近景はもちろん、遠景でも十分な解像感があり、森を埋め尽くす木々の一本一本まで見通せそうなくらいシャープに描かれている。空撮で映し出されるラドローの牧歌的な風景も美しく、穏やかな田舎町と呪われた土地という対照的な世界観を見事に表現していた。
古い時代を描く作品では、セピア調やフィルム感を強調する演出が用いられることも多いが、本作はそうした加工に頼らず、ノイズ感もない比較的クリアな映像でまとめられている。
後半は暗いシーンが増え、屋外で激しく動き回る場面も多い。それでも暗部の階調は非常に優秀で、視認性を損なうことなく細部まで丁寧に描写されていた。
唯一惜しかったのは、蘇ったティミーの特殊メイクだ。
朽ちていく肉体の表現は2019年版の方が完成度が高く、本作は4K画質ゆえに細部まで見えてしまうこともあり、蘇ったもの特有の質感がやや物足りなく感じた。
それでも、田舎町の空気感や、地下室や納屋に積み重なった汚れ、湿った質感までしっかり描かれており、ホラー作品としての映像美は十分に味わえる。
4K/Dolby Visionに見合った、高い完成度を持つ映像だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
雰囲気作りは良いが、印象は薄い。
迫力はあと少し欲しかった。
かなり薄い。
田舎の空気感の表現はできている。
トップは少し。
音響は前作と比べると、全体的に控えめになっている。
配信オリジナル作品ということもあり、ダイナミックレンジは意図的に抑えられているのだろうか。ホラー作品は必ずしも大音量である必要はないが、それでももう少し迫力が欲しかった。
低音も前作ほど積極的ではなく、印象に残る場面はあまり多くない。
終盤は前作以上にアクション要素が強くなり、サラウンドを活かせそうなシーンも多い。
しかし実際にはリアスピーカーの活用はかなり控えめで、マルチチャンネルならではの包囲感や方向感は期待したほど感じられなかった。
Dolby Atmosにも対応しているが、トップスピーカーの使用頻度も少なく、高さ方向の表現はわずかに感じられる程度に留まる。
ダイナミックレンジ、低音、サラウンド、そしてAtmosによる立体感まで含めると、総合的には2019年版の方が一歩上だったと言わざるを得ない。
シチュエーションを考えれば、もっと音響を活かせる余地は十分あっただけに、その点は惜しく感じる。
ホームシアター作品として見ると、もっと踏み込んだサウンドデザインにして欲しかったというのが正直な感想だ。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
ドナを襲撃
少し上を使うが、雰囲気重視。
ティミー狩り
納屋や家の争いは大人しめ。
総評
2019年版の世界観が好みだっただけに、本作は少し期待とは違う方向性だった。
ホラー作品としては90分という上映時間は決して短すぎるわけではない。しかし、何世代にもわたって受け継がれてきた土地の呪いや墓地の歴史を描くには、もう少し時間をかけて掘り下げてほしかったという思いが残る。
墓地の起源やラドロウに隠された歴史が明かされた点は興味深く、前作では断片的だった世界観を補完する前日譚としての価値は十分にあった。一方で、先住民族の仮面や土地の呪い、ティミーの復活など、あえて多くを語らず想像へ委ねた要素も多く、そうした余白を楽しめるかどうかで評価は分かれそうだ。
日本では配信限定作品となったが、4K/Dolby Visionによる映像は非常に高水準で、美しい田園風景と不気味な雰囲気を見事に両立していた。その反面、音響は物足りず、ホームシアター作品としては映画におけるサウンドの重要性を改めて実感させられる仕上がりでもあった。
その影響もあってか、2019年版ほどの恐怖や絶望感には届かず、ホラー映画としてのインパクトは弱かった。
それでも『ペット・セメタリー』の世界をさらに知りたいシリーズファンにとっては、世界観の補完としてチェックするのも良いかもしれない。
公式予告編(海外版)
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
