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あらすじ
かつて世界中で活躍していたスーパーヒーローたちは、ある出来事をきっかけに活動を禁じられ、正体を隠して普通の市民として暮らすことになった。
怪力を持つMr.インクレディブルことボブ・パーもその一人。
妻のヘレン、娘のヴァイオレット、息子のダッシュ、そして幼いジャック=ジャックと郊外で生活しているが、かつて人々を救っていた日々を忘れられず、平凡な仕事と暮らしに物足りなさを感じていた。
そんなある日、ボブのもとへ謎の人物から秘密の任務が舞い込む。
再びヒーローとして活躍できることに喜ぶボブだったが、その仕事の裏には、かつてのスーパーヒーローたちに関わる危険な計画が隠されていた。
やがて家族全員が事件へ巻き込まれ、それぞれが持つ能力を使いながら巨大な脅威へ立ち向かうことになる。
作品レビュー
ピクサー作品の中でも、個人的に特にお気に入りの一本。
スーパーヒーロー映画でありながら、実写では出来ない大胆にデフォルメされたキャラクターデザインと、アニメーションだからこそ成立するスピーディーなアクションがとにかく面白い。
ただ、本作の魅力は派手な能力や戦闘だけではない。
本質的にはかなり身近な家族映画で、仕事に不満を抱える父親、家庭を支える母親、思春期の娘、落ち着きのない息子と、それぞれが普通の家庭にありそうな悩みを抱えている。
しかも、その性格や家庭内での役割がスーパーパワーそのものに反映されているのが面白い。
一家を力で支える父ボブは怪力を持ち、様々な方向から家族を支える母ヘレンは身体を自在に伸ばせる。目立つことを避けるヴァイオレットの透明化や、常に動き回るダッシュの高速移動まで含め、能力そのものがキャラクター紹介になっている。
特に母ヘレンの能力は非常に汎用性が高く、身体を伸ばすだけでなく、パラシュートのように広がったり、乗り物のような形になったりと、アクションの中で次々と使い方が変化するのが楽しい。
敵役の自称インクレディボーイことシンドロームは生まれつきの超能力がない。
ファンであったMr.インクレディブルに拒絶されたことにより、憧れから憎しみに変わったタイプで、その後にテクノロジー企業で大成功して復讐にやってくる。
特別な力を持って生まれたヒーローたちに対し、頭脳と技術だけで同じ領域へ到達しようとする存在であり、Mr.インクレディブルとの対比も分かりやすい。
単純な悪役ではなく、かつてヒーローに憧れていた少年だったという背景があることで、物語にも少し苦い部分が残されている。
世界観は1960年代のアメリカを思わせる住宅や車、ファッションに、未来的なテクノロジーを組み合わせ、そこへ昔のスパイ映画のような秘密基地や巨大兵器まで登場する。
ヒーローアクションにもってこいの舞台設定で、テンポの良い『能力vs技術』の応酬が非常にマッチしていた。
本作はピクサーにとって、本格的に人間キャラクターを中心へ据えた最初の長編作品でもある。
その難しい題材をリアルな人間へ寄せるのではなく、身体の形や動きを大胆にデフォルメすることで、現在見ても古さを感じにくい独自のスタイルを作り上げているのが凄い。
描かれるのはヒーローとして世界を救うだけでなく、夫婦や親子としてどう向き合うのか。
腹の立つ上司へのイラつきや、子育ての苦労、思春期の悩みなど、とても身近なものばかり。そこが物語の中心にあるからこそ、大人でも子供でも、自分に近しいものを感じられる。
続編『インクレディブル・ファミリー』まで成功し、さらに第3作も控えているシリーズだが、その原点として今見ても完成度は非常に高い。
実写のヒーロー映画とはまったく違う方法で、アクションと家族ドラマを見事に両立した、誰がいつ観ても楽しめる素晴らしい作品だ。
メタデータ
映像レビュー
夜間の暗部から炎や氷まで効果抜群なDolby Vision
CGアニメらしい安定感のある高画質。
過度にシャープネスを強調するのではなく、近くのキャラクターやオブジェクトはくっきりと、遠景は少し柔らかく描かれている。比較的シンプルなデザインとラインで構成されているため、画面内の情報が整理されていて非常に見やすい。
デフォルメされたキャラクターが高速で動き回る作品だが、映像は終始安定しており、目立ったノイズもほとんど感じられない。
Dolby Visionの効果も大きい。
ライトや炎の強い輝きだけでなく、室内で人物へ当たる光まで自然に表現され、シンプルなCGながら光のリアリティはかなり高い。夜間も暗部階調がしっかり残されているため見やすく、鮮やかなヒーロースーツの色やフロゾンの氷なども美しく映える。
2004年の作品だけに、現在のピクサー作品ほど背景のオブジェクトや細かな書き込みは多くなく、そこには多少時代を感じる。
ただ、ジャングルなども必要以上に情報を詰め込まないことでキャラクターやアクションが埋もれず、この作品にはむしろ合っているように感じた。
4Kアニメーションとしてトップクラスの情報量とまではいかないものの、不満を感じるような部分はほとんどない。
ピクサーらしいデフォルメされた質感と、Dolby Visionによる鮮やかな光と色を楽しめる、完成度の高い4K映像だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
巨大ロボのシーン以外は重さ控えめ。
大き過ぎないピクサー仕様。
移動感も方向感も素晴らしい。
目立つほどではないが、さりげなくサポート。
音のバリエーションがトップクラス。
まさしく理想的なAtmos化が成された一作。
元々は6.1chという、DVD後期のサラウンド過渡期に作られた作品で、当時からリアチャンネルを比較的よく使う音声だった。
そこへDolby Atmos化によって高さ方向が加わり、本作のアクションとの相性が一気に良くなっている。
もともと空中を飛ぶものや高低差のある動きが多い作品なので、トップスピーカーを使えそうな場面はかなり多かった。その一つひとつを拾うように、画面上方の動きへ合わせて音も自然に上へ振られていく。
Atmos対応作品でも、雷雨や飛行物など限られた場面だけでトップを使う作品は少なくない。
短時間では効果的でも、「もっと使える場面があるのに」と感じることも多いが、本作はその使い方がかなり積極的。
すべての音を無理に上へ持っていくわけではなく、映像に合う場面で細かく使い分けているため、トップの活用パターンそのものが多彩だ。
しかもアクションシーンが最初から最後まで小刻みに入るため、一つの印象的な場面だけではなく、映画全体を通してAtmosの効果を楽しめる。
元々優秀だったサラウンドもさらに活かされ、前後左右への方向感や移動感、周囲を包み込むような広がりまで非常に良好。
特に後半、家族全員がそれぞれの能力を使って戦う場面では、スピーカー全体が一気に活発になり、映像のスピード感をそのまま音で追いかけるような楽しさがある。
低音やダイナミックレンジは極端に強烈なタイプではないものの、アクションの迫力を支えるには十分。
CGアニメらしい軽快さを残しながら、サラウンドの動きと立体感を存分に楽しめる。
一つの場面だけでAtmosを印象づけるのではなく、作品全体の様々なシーンで高さを活用する。
聴いていてとにかく楽しく、Atmos化のお手本と言いたくなるほど完成度の高いアップデートだった。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
Mr.インクレディブルの活躍
少しだけだが、的確に上を使う。少しだけ。
火事場の活躍
炎や崩れる家は全方位で。
久しぶりのミッション
鳥の声や、ロボットで的確に上を使う。
インクレディボーイの罠
様々な装備を使ってMrインクレディブルを追い詰める。
施設へ侵入
上の音はちゃんとトップでハッキリと。
飛行機戦
ミサイルや飛行機の移動音、墜落など本当にきっちり作ってる。
兄弟で大活躍
vs 円盤で能力全開、めちゃくちゃサラウンド使う。トップも使う。
家族 vs ロボット
巨大ロボとのバトルで、映像通りにかなりトップを活用する。
総評
CGアニメ作品の中でも、トップクラスに好きな一本。
とにかく動きが速くて面白く、実写ではまず不可能なアクションを次々と見せてくれる。
その一方で、思わず笑ってしまうような演出も多く、ヒーロー映画としての格好良さとPixarらしいユーモアがうまく共存している。
非常に身近な家庭の問題が中心にあり、超能力とはまったく関係のない部分には共感しやすく、ヒーローの悲哀と日常的な家族ドラマを自然に組み合わせている。
映像も現在から見て大きく古さを感じることはなく、デフォルメされたキャラクターデザインだからこそ時代を超えて楽しみやすい。
そしてDolby Visionによる鮮やかな映像に加えて、Dolby Atmos化によるサラウンドの進化がかなり大きい。高さ方向まで積極的に使った音響はアクションとの相性が抜群で、ホームシアターで観ることで作品の楽しさがさらに増す。
2004年の作品でありながら、今から観ても十分に楽しい。
続編もしっかり作られ、さらにシリーズが続いていく今だからこそ、最初の一作として改めて観る価値も高い。
アニメーションに抵抗がなければ、大人にも子供にも安心しておすすめできる一本だ。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
