作品データ
あらすじ
かつて米軍特殊部隊で活躍し、その後は傭兵として数々の危険な任務を生き延びてきたジョン・クリーシー。
しかし、過去の任務による深い傷とPTSDを抱えた彼は第一線を離れ、孤独な生活を送っていた。
そんなクリーシーのもとへ、かつての仲間ポール・レイバーンから新たな仕事が持ち込まれる。
舞台はブラジル・リオデジャネイロ。
テロ組織や犯罪勢力が複雑に絡み合う事件を追う中で、クリーシーはレイバーンの娘ポーを守ることになり、再び暴力の世界へ足を踏み入れていく。
敵の正体も目的も分からない状況で、かつて培った戦闘能力と経験を武器に少女を守りながら、クリーシー自身も過去の傷と向き合っていく。
作品レビュー
A.J.クィネルの小説を原作とする『マン・オン・ファイア』、3度目の映像化。
1987年版は未見だが、2004年のデンゼル・ワシントン主演の『マイ・ボディガード』はとても好きな作品だった。
ただし今回のNetflix版は、その映画を長編ドラマとして作り直したものではなく、原作のジョン・クリーシー・シリーズを改めて題材にし、別の物語として再構築されているそうだ。
主人公クリーシーを演じるのはヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世。
デンゼル版の寡黙で重々しいクリーシーとはまた違い、こちらは少し荒々しく、危険な雰囲気が強い。それでも単なる無敵の兵士ではなく、特殊部隊や傭兵として生きてきた過去によるPTSDを抱え、人との関わりを避けながら暮らしている。
そこから事件のキーとなる少女のポーを守ることになり、周囲の人間たちと少しずつ関係を築いていく。
最初は一人で何でも片付けようとするクリーシーが、ポーや仲間を受け入れ、協力して行動するようになる変化が物語の中心にある。戦闘能力の高さだけでなく、壊れかけた男が再び人との繋がりを取り戻していくドラマとして描かれているのが良かった。
舞台となるリオデジャネイロも印象的。
華やかな観光都市としてではなく、犯罪組織が入り込む地域やスラム街まで含めて描かれ、その雑然とした街並みにはかなり生々しい雰囲気がある。日差しや空気感の映像表現が秀逸で、危うさを感じられる。
登場人物や協力者も貧しい生活から抜け出したいと、必死にもがいている人たちも多い。
物語も最初は少女を守る護衛ものに見えるが、進むにつれて犯罪組織やテロ、政府機関まで絡む大きな陰謀へと広がっていく。映画版のようなボディガード要素もあるにはあるが、主に単独で行動し、ポーを守るよりも目的達成を優先する行動が目立つ。
その中でもクリーシーの戦い方は容赦がない。
元特殊部隊員らしい判断力と戦闘能力を持ち、必要なら相手を痛めつけてでも情報を引き出す。アクション作品らしい派手な銃撃戦を見せるより、相手を追い詰め、少しずつ真相へ近づいていくスリラー色の強い作りになっている。
だからデンゼル版のようなタイトル通りのボディガードらしいアクション大作を期待すると、かなり違う印象を受けると思う。
その代わり7話という長さを使って、クリーシー自身の傷や周囲との関係、事件の裏側をじっくり描いている。
題名通り、火がつけばガンガン攻め入って止まらない男の危険さはしっかり健在。
映画版とはまったく違う方向へ広げながら、クリーシーという人物の魅力をきちんと残したドラマで、個人的にはこちらもかなり好きだった。
メタデータ
映像レビュー
リオデジャネイロの街並みを描き出すフィルムライクな4K映像
ブラジルの街並みを非常に美しく描いた4K/Dolby Vision映像。
全体にはっきりとした粒状感があり、色合いもどこか昔の映画を思わせるフィルムライクな仕上がり。リオデジャネイロの乾いた空気や雑然とした街並みにもよく馴染んでおり、個人的にはこうした映像表現は今でもかなり好みだ。
特に素晴らしいのが景観の描写。
都会の高層ビルから密集したスラムまで遠景をシャープに見渡せ、細かな建物や街の情報もしっかり残されている。解像感は申し分なく、何気ない空撮だけでも4Kらしい映像の楽しさを感じられた。
Dolby Visionによる明暗表現も非常に優秀。
強烈なブラジルの日差しや街のライト、炎の揺らぎにはHDRらしい鮮やかさがありながら、暗い場面では黒をきちんと沈めつつ必要な情報は残している。
車体へ映り込む光や細かな反射もリアルで、明暗差によって映像そのものに奥行きや立体感まで感じられる。
昔のアクション映画を思わせるフィルム感と、現代らしい4K/HDR表現をうまく両立した映像。
個人的にはほとんど欠点を感じない、非常に完成度の高い4K/Dolby Visionだった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
アクションよりも、雰囲気作りがメイン。
銃声は中々、爆発は威力あり。
とにかく銃撃で、方向性はあまりない。
静かな街と賑やかなスラムの雰囲気はとても良い。
使用はかなり限定的。
音声は、いかにも現代のドラマ作品らしい落ち着いた作り。
物語の大半は会話と捜査を中心に進むため、ダイナミックレンジを大きく使った派手な音響ではなく、ストーリーを邪魔しないバランスが優先されている。
ところどころに入る銃撃戦ではリアも頻繁に使っており、銃声にも鋭さがある。爆発もしっかり勢いがあり、アクションそのものの音質に不満はない。
ただ、7話を通して考えると戦闘シーンはそれほど長くなく、映画一本分の見せ場をドラマ全体へ散らしたような印象。
事件の真相と犯人を追うスリラーが中心なので、銃撃や爆破が始まっても比較的短時間で終わり、音響を目的に楽しむ場面は多くない。
Dolby Atmosも同様で、飛行機など高さを活かせる音ではトップスピーカーが使われるものの、その機会も僅かなものだった。
その一方で、スラム街では人々の声や街の雑踏が周囲へ自然に広がり、現地の賑やかな空気を感じられる。
派手さを求める音声ではないが、長いドラマを疲れずに楽しむにはちょうど良い。
特別な聞きどころこそないものの、物語と舞台の雰囲気をきっちり支える堅実なサウンドだった。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
飛行場襲撃。
ポーの帰宅便を阻止しに来て銃撃戦に。
刑務所をヘリで襲撃
ヘリで上は使わず、後ろメイン。
病院で最終決戦
銃撃と格闘がたっぷりと。
総評
全7話という長さが、物語にもキャラクターにも丁度よく感じられた作品。
2004年のデンゼル・ワシントン版とはかなり印象が異なり、今回のクリーシーはより荒々しく危険な雰囲気を持っている。その姿は、むしろ『マン・オン・ファイア』というストレートなタイトルによく合っていた。
人との関わりを避けていた男が、ポーをはじめ周囲の人物たちと接することで少しずつ変化し、一人ではなく協力して行動するようになる。こうしたクリーシーの内面的な変化は、映画より時間をかけられるドラマシリーズとの相性も良かったと思う。
アクション作品ではあるものの、銃撃戦を次々と見せるタイプではなく、捜査を重ねながら事件の真相へ近づいていくスリラー寄りの作りなので、派手な争いばかりの作品には少し飽きたという人にも見やすいバランスになっている。
そして大画面に映える、リオデジャネイロの美しい街並みからファベーラの細かな路地まで描き出す4K/Dolby Visionが秀逸。人物と物語をじっくり描きながら映像面でもしっかり魅せてくれる。
7話で無理なく完結まで楽しめる、完成度の高いNetflixオリジナル作品だった。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
