作品データ
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あらすじ
幼い頃に母親を亡くし、厳格な父親のもとで育ったヴィクター・フランケンシュタイン。
優秀な医師となった彼は、死を克服するという執念から、亡くなった人々の身体を使って新たな生命を生み出そうとする。
資産家の支援を得て実験を成功させるが、誕生した怪物を目の前にすると、その存在を受け入れられず拒絶してしまう。
創造主に見捨てられた怪物は、人間との出会いを通して言葉や感情を学んでいく。
しかし、異様な外見は恐怖と暴力を招き、愛情を求める心は深い孤独へと変わっていく。
生命を作りながら責任を放棄したヴィクターと、自分が生み出された意味を求める怪物。
二人は互いに与えた痛みから逃れられないまま、再び向き合うことになる。
作品レビュー
冒頭から一気に引き込まれる始まり方。
氷に進路を阻まれた船が、衰弱したヴィクターという男を救助する。直後には彼を追ってきた謎の男が現れ、船上で激しい戦いが始まる。
物語は、なぜ二人がこの場所までたどり着いたのかを振り返る形で進み、ヴィクターが怪物を生み出すまでの経緯を、幼少期から丁寧に描いていく。
前半はヴィクター、後半は怪物の視点を中心とした構成。
ヴィクターの生家は、隅々まで作り込まれた豪華絢爛な空間として描かれる。
一方、家を離れてからの生活は荒れ果てており、恵まれた環境で育ちながら、次第に社会から異端として排除されていく姿との対比が印象的だ。
教育熱が行き過ぎた医師の父親から厳しく育てられるが、弟が生まれると父親の愛情はそちらへ向かい、ヴィクターは家族の中で存在しないかのように扱われていく。
父親のお気に入りだった弟と、その許嫁であるエリザベスとの関係も含め、ヴィクターの歪んだ性格が形作られていく過程が積み重ねられていく。
父親の死後、医学界では異端として扱われていたヴィクターの研究に、ある富豪が目をつける。
莫大な資金と設備を手に入れたことで、彼は生命を作り出す研究へさらにのめり込んでいくことになった。
ヴィクターを取り巻く人々には、良識や優しさを持つ人物が多く、だからこそ神の領域へ踏み込もうとするヴィクターの傲慢さと狂気が、より際立って見える。
そして何より、本作は映像が本当に素晴らしい。
色彩、照明、美術、衣装、カメラワークのすべてに強いこだわりが感じられ、物語とは関係なく、ただ画面を眺めていたくなるほど美しい。
怪物の造形も、不気味さだけを押し出したものではない。
細身の身体や継ぎ合わされた皮膚には異様さがあるものの、どこか洗練されており、場面によっては格好良くすら見える。
原作小説は読んだことがなく、過去の映画作品も未鑑賞なので、怪物には「無口で動きが遅い」という漠然としたイメージを持っていた。
しかし、本作では非常に人間らしく、知性を持ち、何より優しく愛情深い。
生みの親であるヴィクターから蔑まれ、捨てられても、最初から無闇に誰かを傷つけようとはしない。ネズミと寄り添って暮らす姿には、思わず微笑ましさすら感じる。
外見ではなく内面を見ようとするエリザベスや、目の見えない老人との交流も温かい。
言葉を覚え、自分の感情や願いを表現できるようになっていく姿は、純粋な子供が成長していくようだった。彼が求めているものが支配や破壊ではなく、愛情と居場所であることが伝わってくる。
怪物を恐ろしい存在として描くよりも、人間から拒絶され続けた結果として傷ついていく姿を描いているため、次第にヴィクターよりも怪物へ感情移入するようになっていった。
ヴィクター自身もまた、父親から愛情を得られず、父親を憎んでいたはずの彼が、自ら生み出した怪物に対して同じような拒絶と暴力を繰り返してしまう。
傷つけられた者が、今度は別の誰かを傷つけるという、現実にも見る虐待の連鎖のようで痛ましい。
こういった親から子へ受け継がれる痛みの連鎖が、創造主と怪物の関係を通して描かれている。
生命を作り出すことだけに夢中になり、その後に生じる責任から逃げようとするヴィクターの姿は、現代の科学技術にも重なって見える。
作れるかどうかだけを追い求め、作った後に何が起きるのか、誰が責任を負うのかを考えない。
本当に恐ろしいのは生み出された怪物ではなく、命を一つの成果として扱い、不要になれば捨てようとする人間の傲慢さなのかもしれない。
ヴィクターと怪物の両方を丁寧に描き、最後には創造と責任だけでなく、赦しへと物語を繋げている。
受けた傷を消すことはできないが、相手を赦すことで憎しみの連鎖を断ち切り、自分自身を解放することは出来る。
怪物の姿を借りながら描かれるのは、愛されなかった父と、愛されることを願った子供のような関係だ。
原作を土台にしながら、映画独自に変更された部分も多いようだが、非常に綺麗にまとまった素晴らしい作品だった。
メタデータ
映像レビュー
Netflixトップクラスの圧倒的な映像美
間違いなく、Netflixオリジナル作品の中でも最高レベルの映像美。
Dolby Visionの効果は大きく、揺れる蝋燭の炎や、木々の隙間、窓から差し込む光が非常に美しい。
光に照らされた周囲の空間まで幻想的に見え、ファンタジーらしい色彩が物語の雰囲気と見事に重なっている。
美術品や調度品で埋め尽くされた豪華絢爛な屋敷も鮮やか。
前半に登場する宮殿のような生家と、後半の研究に使われる汚れた城では、同じ豪華さでもまったく異なる表情を見せる。清潔で華やかな空間と、荒廃して不穏な空間の対比が明確で、どちらも画面として非常に美しい。
怪物の造形も、一目で異質な存在だと分かる。
縫合された身体には生々しさと実在感があるが、必要以上の不快感や露悪的なグロさは抑えられている。
汚れや傷、死体を扱う場面でさえ、どこか絵画的に見えるほど、映像の隅々まで美意識が行き届いている。
カメラワークも印象的で、やや低い位置から人物や建物を捉える場面が多く、広角レンズで撮影したような画面いっぱいの構図から、強い奥行きとスケール感が生まれている。
配信オリジナル作品ではあるが、画面から受ける印象は完全に劇場映画のもの。
人物の背後まで作り込まれた空間が広がり、セットの大きさや世界の広さをしっかり感じられる。
自然の景色も素晴らしい。
雪原や森林は細部まで鮮明で、遠景が甘く見える場面はほとんどない。木々や雪の質感も細かく、静かな風景そのものが作品の空気感を伝えてくる。
暗い場面での階調表現も抜群で、黒の中にある衣装や背景の情報が潰れず、暗さを保ちながら見づらさを感じさせない。
蝋燭や雷光、窓から差し込む光との明暗差も美しく、Dolby Visionの長所が存分に生かされている。
ノイズ感もなく、解像感、色彩、暗部表現、光の描写、スケール感のすべてが高水準。
配信オリジナル作品が到達できる映像表現の凄みを感じられる、圧倒的な映像美だった。
音声レビュー
爆発ですら薄い。
銃声の鋭さは中々。
方向感は少し。
雰囲気作りは良し。
雷以外は、鳥やカラスくらい。
音質はとても良いが、反面サラウンドは全体的に控えめなデザイン。
高音域は明瞭で、銃声などの鋭い効果音が非常に気持ちよく響く。
一発ごとの輪郭がはっきりしており、派手に鳴らし続けるのではなく、必要な場面だけを強く印象づける使い方だ。
一方、低音はそれほど強くない。
映像のスケールに合わせて無理に迫力を加えるのではなく、場面の雰囲気を損なわない程度に抑えられている。
部屋を揺らすような重低音を期待すると物足りなさはあるが、この作品には合った調整だと思う。
リアチャンネルの使用も限定的で、音が頻繁に後方を動き回るような作りではない。
基本はフロントを中心に、、台詞、効果音、音楽を丁寧にまとめたサウンドデザインになっている。
屋敷、研究施設、雪原といった場面ごとの環境音も自然に作り込まれており、サラウンドの主張は弱くても、空間そのものが無音になることはない。
一部では雷が頻繁に鳴り響き、その場面ではトップのスピーカーも含めて大きな広がりを感じられる。
ただし、音響的に強く目立つのはその程度で、全編を通して派手さを押し出す作品ではない。
フロント中心の落ち着いた音作りで、クラシック調のBGMを中心に、豪華な映像と非常に相性が良く、物語の雰囲気を静かに支えるサウンド。
驚くような音響ではないが、作品世界を壊さず、美しい映像へ集中させるための設計としては良くまとまっている。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
謎の男救出
ラッパ銃の響く、最高に惹かれるオープニング。
雷注入
上でゴロゴロ雷が鳴りまくる。
総評
フランケンシュタインという題材自体は非常に有名だが、これまで原作も過去の映画作品も触れる機会がなかった。
それでも、本作は予備知識なしで十分に楽しめる、素晴らしい作品だった。
ギレルモ・デル・トロ監督の作品はもともと好きだが、本作にも彼らしい美学が存分に詰め込まれている。
異形の存在へ向ける優しい眼差し、人間の中に潜む残酷さ、そして暗く物悲しい世界を美しく見せる映像表現。そのどれもが、まさにデル・トロ作品らしい。
物語の中心にあるのは、父と子の関係だ。
愛情を得られずに育った者が、自ら生み出した存在へ同じ傷を与えてしまう。虐待や拒絶の連鎖を描きながら、それでも最後には赦しによって、その連鎖を断ち切ろうとする。
怪物とは異形の外見を持つ存在ではなく、他者を愛せず、命を自分の都合で扱う人間の心に宿るものなのだろう。
神を気取り、生命を作り出すことだけに執着する傲慢さ。愛情という名の支配や、期待に応えられなかった者への拒絶。
そうした人間の弱さと残酷さを描きながら、同時に、傷ついた者が誰かを赦すことで自分自身を解放する物語にもなっている。
映像面は本当に素晴らしく、出来るだけ良い視聴環境で観てほしい。
色彩、照明、美術、衣装、カメラワークのすべてに強いこだわりが感じられ、配信作品とは思えないほどのスケールと密度を持っている。
ギレルモ・デル・トロ独自の世界観に満ちた、忘れがたい作品だった。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
