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あらすじ
貧富の差が大きく広がった近未来。
職を失い、病気の娘を救うための金にも困っていたベン・リチャーズは、巨大ネットワーク企業が運営する人気リアリティーショー「ランニング・マン」への参加を決意する。
ルールは30日間、プロのハンターたちから逃げ続けること。逃げ延びるほど賞金は増えていくが、参加者の行動は全世界へ放送され、視聴者までもが報奨金を目当てに彼の居場所を通報する。
追われる側となったベンは、次第に番組の人気者となる一方、その反抗的な姿勢によってショーを支配するシステムそのものを揺るがしていく。
作品レビュー
スティーブン・キングがリチャード・バックマン名義で発表した原作小説を、あらためて映画化した作品。
1987年のシュワルツェネッガー主演『バトルランナー』の直接的なリメイクというより、今回は原作へ戻った再映画化という位置づけが近い。
そもそも原作が発表されたのは1982年。当時「2025年」は遠い未来として描かれていたわけだが、実際にその時代まで来てみると、格差社会やメディア支配、視聴率至上主義といった部分が妙に現実味を持って見えるのが面白い。
物語の中心にいるのは、病気の娘を救うため、命懸けの番組へ参加するベン・リチャーズ。
30日間、プロのハンターから逃げ続ければ賞金が増えていくというデスゲームだが、怖いのは追ってくるのが専門のハンターだけではないこと。
視聴者自身も賞金目当てで居場所を通報できるため、街も人も社会全体がゲームフィールドになっていく。人の死を娯楽として消費しながら、同時に主人公そのものが人気コンテンツへ変わっていく構造もかなり皮肉が効いている。
さらに巨大ネットワーク側は、映像や情報を使って都合のいい人物像を作り上げていく。テレビで見せられるベンと、実際のベンとの間にズレが生まれていくあたりは、今のSNSや炎上文化、数字が取れれば何でもいいと言わんばかりのメディア環境まで連想させる。
格差社会と娯楽産業が完全に結びつき、見る側までその仕組みに参加させられているのがこの世界の一番嫌なところだが、何だかリアルで人間ってそんなもんだと今なら分かる。
その中でグレン・パウエルがかなりハマり役。常に眉間にしわを寄せながら体制側へ暴言を吐き、追い詰められても反抗心を失わないベンと、パウエル自身の明るさやスター性との相性が抜群にいい。
エドガー・ライトらしいテンポの良い編集もあり、逃げてもすぐにまた追手に追われ、広い世界を舞台に逃げ続けるスケールの大きな追跡劇として楽しめる。
原作や1987年版を知らなくても問題なく入り込める作りで、巨大な番組だけでなく、街や視聴者まで追跡側へ巻き込んでいく設定が、この作品ならではの面白さになっている。
傑作と呼ぶほどではないが、グレン・パウエルのキャラクターの強さと、好き放題に世論を操る体制側への苛立ちも含め、最後まで十分楽しめる一本だった。
メタデータ
映像レビュー
赤い番組デザインと暗い街に浮かぶ多彩な光源
近年の作品らしい、高品質な4K/Dolby Vision映像。
撮影にはARRI ALEXA 35を中心に使用し、4.6K ARRIRAWで収録。最終的なDigital Intermediateも4Kで制作されており、UHDではネイティブ4Kとして楽しめる。
非常に高い解像感を持ちながら、デジタル特有のクリアさを前面に出しすぎず、どこかフィルムを思わせる柔らかな質感が残されているのが特徴。撮影監督のチョン・ジョンフンも、デジタル撮影でありながら少しアナログな雰囲気を狙ったと語っており、その狙いは映像からもしっかり感じられる。
特に暗く汚れた貧困層の街並みとの相性が良い。古びた建物や湿った路地、生活感のある室内まで細部はしっかり見えるが、シャープすぎないため世界そのものが無機質にはならない。
一方で富裕層のエリアへ移ると印象は一変。近代的で洗練された建物、明るい照明、整えられた街並みとなり、貧困層との格差が映像だけでも分かるような対比になっている。
暗い街中でも見通しが良く、完全に黒が沈み込む場面は少ない。ぼんやりとした街灯や車両のランプ、看板など、常にどこかに弱い光源があり、見通しを保ちながら薄暗い雰囲気を維持している。この強すぎない光がアナログ感のある映像とよく合い、常にどこか落ち着かず、追い立てられているベンの状況まで反映しているように感じる。
炎や車両のライト、追跡用ドローン、生存報告を撮影する端末など、光そのものを印象的に使った場面も多い。
アクションは装甲車やバイクを使った追跡が中心で、街そのものを破壊するような超大作的な派手さは控えめ。終盤の飛行機内での戦いは限られた空間を活かしていて見応えがあるが、映像としてより印象に残るのは、番組内に表示される大量の情報や広告、ニュース映像、陰謀論を語るビデオなどかもしれない。
現実の映像と番組用映像が入り混じることで、巨大メディアに監視され続ける世界観そのものを視覚的に作っている。
赤を基調とした「ランニング・マン」の番組デザインも目に残るもので、1987年版でシュワルツェネッガーが着ていた赤い競技用スーツを思わせる色でもあり、旧作へのオマージュと巨大テレビ番組としてのブランド感を両立している。
ネイティブ4Kらしい解像感を持ちながら、あえてデジタルっぽさを抑えた自然な質感で、作品世界によく合った映像だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
平均的なレベルで、一部で強く感じるくらい。
一部で大きめだが、銃撃などはそこまで。
後ろの銃撃や、上のドローンはハッキリ。
環境音は弱めで、BGMの存在感が大きい。
アクションシーン以外の方が目立つ。
飛び抜けた特徴はないものの、全体としては無難にまとまったDolby Atmos音声。
追われ続けるデスゲームだけに銃撃戦はいくつもあるが、銃声そのもののレンジはそこまで大きくなく、キレも特別鋭いタイプではない。場面によっては、銃声よりも番組側の歓声や演出音の方が強く感じるほどで、アクションそのものより「ショーとして見せる音」を重視している印象がある。
爆発やBGMではしっかり音量が上がり、一部では十分な迫力も感じられるが、作品全体を通して圧の強いサウンドというわけではない。LFEも同様で、重く響かせる場面はあるものの、追手とのアクションで強く主張するほどでもない。
むしろ特徴的なのはBGMで、かなり長い時間しっかりと音楽を聴かせる作り。ベンが送る一日の生存報告映像や番組演出と合わさることで、命懸けの逃走そのものが巨大なショーとして消費されていることを強く意識させる。
サラウンドの活用は平均的。後方からの銃撃や番組会場の歓声などでマルチチャンネルを使う場面はあるが、細かな移動感や方向感を積極的に楽しませる場面はそれほど多くない。
一方でDolby Atmosによるトップスピーカーは、リア方面より印象に残る場面がいくつかある。
追手のヘリやドローンによる攻撃、下水へ落下する場面、エレベーターの移動など、高さ方向を使いやすい定番の場面ではきちんとトップを活用。番組や施設内のアナウンスも頭上からはっきり聞こえることがあり、使用頻度も極端に少ないわけではない。
ただ、銃撃、低音、移動感、トップ活用のどれかが突出して優れているというほどではない。悪いところはほとんどないが、「ここがすごい」と強く印象に残るポイントも少なめ。
番組演出とBGMによるショー感はしっかり出ているものの、ホームシアター向け音声としては佳作クラスのサラウンドだった。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
ホテルにハンター
裸の逃走劇。リアやトップはちょい使い。
車で逃走
トランクからの反撃。迫力はそこそこ。
協力者の家に追手
様々な家のトラップを楽しむ場面。
北へ向かう
短いカーチェイス。ドローン攻撃で少しトップを使うくらい。
飛行機で決戦
番組や通信はずっとトップ。飛行機の動きや銃撃など、終盤で派手に。
総評
顔を歪めて体制側に噛み付くグレン・パウエルの演技が光るデスゲーム系アクション。
上映時間は比較的長めだが、世界観やルールをしっかり説明しながら、次々と新たな追手が現れるため、そこまで間延びした感じはなかった。
貧困層を食い物にする体制側や、人の死を娯楽として消費する視聴者など、かなり過激な設定ではあるが、現代のメディア文化への皮肉として見ると非常に面白い。
特に数字至上主義の描き方は印象的。視聴率や人気、話題性といった数字そのものは重要でも、それを追い求めるあまり人間性まで置き去りにして熱狂していく姿は、今のSNSや動画文化にも通じるものがあり、妙にリアルだった。
映像はフィルムライクな質感を残した高品質な4Kで、暗く汚れたスラムと、派手に作り込まれた番組世界の対比も良好。音声は飛び抜けた迫力こそないが、Dolby Atmosによる高さ方向の使い方もあり、全体としては十分に楽しめる仕上がりだった。
体制側がかなり無茶をする作品だけに、最後の結末はやや安全な方向へまとめた印象もあり、個人的にはもう少し振り切った展開でも良かった。
それでもテンポは良く、社会風刺を含みながらも難しくなりすぎない。巨大なショーを眺めるような感覚で、気軽に楽しめるSFアクションだった。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
