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あらすじ
2010年4月、メキシコ湾沖に浮かぶ石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」。
作業員たちは海底油田の掘削作業を進めていたが、現場ではいくつもの異常や安全上の懸念が積み重なっていた。
設備や作業工程への不安を抱えながらも作業が続けられる中、ついに制御不能の噴出事故が発生。施設は爆発と炎に包まれ、作業員たちは限られた時間の中で生き残るための判断を迫られる。
2010年に実際に起きたディープウォーター・ホライゾン事故を基に、巨大災害の発生までと、現場で働いていた人々の脱出と救助を描く。
作品レビュー
2010年4月20日に実際に起きた、ディープウォーター・ホライゾン事故を題材にした作品。
舞台はメキシコ湾沖の巨大石油掘削施設。映画は爆発そのものを見せ場にするだけではなく、そこへ至るまでに何が積み重なっていたのかをかなり丁寧に描いている。
作業は予定より遅れ、現場では圧力試験などから異常が見えている。それでも油井開発を主導するBP側と、リグを運用する現場作業員との間で安全に対する温度差があり、時間やコストを意識した判断が少しずつ安全マージンを削っていく。
ここで怖いのは、誰か一人が明確な悪意を持って事故を起こしたわけではないこと。
開発を急ぎたいBPだけでなく、TransoceanやHalliburtonなど複数企業が関わり、それぞれの判断や情報共有の不足が重なっていく。圧力試験の結果をどう解釈するか、作業を止めるのか続けるのか。「今まで大丈夫だった」という慣れも加わり、小さな判断が連鎖して巨大設備を制御不能な状態へ近づけていく。
一度噴出が始まってからは、企業間のやり取りを描くドラマから一気にサバイバルへ変わる。人間にはどうにも出来ないほどの規模の惨事に、現場の作業員たちは互いに助け合いながら生き残るために動く。その中で、事故によって命を落とした11人の存在もしっかり残されている。
映像の説得力も非常に高い。生存者の証言を基に再現された場面が多く、実際の作業員も制作へ参加。さらにはディープウォーター・ホライゾンを実物の約85%サイズで巨大セットとして建造したことで、設備の規模や作業現場の空気までかなりリアルに感じられる。
そして事故は爆発だけでは終わらず、その後も87日間にわたって原油流出が続き、現在も米国史上最大の海洋原油流出事故として記録されている。
この作品が今でも意味を持つのは、単なる過去の大事故を再現した映画ではないからだと思う。
利益、納期、効率と安全が衝突する構造は、石油業界に限った話ではない。危険信号を軽視し、少しずつ安全側の余裕を削っていけば、同じようなことはどの業界でも起こり得る。巨大事故は突然起こるのではなく、その前に積み重なった小さな判断の先にある。
実話映画として迫力があるだけでなく、産業安全の教訓を残すという意味でも価値のある作品だったと思う。
メタデータ
※ビットレートはプレイヤー再生時の実測目安です。場面により変動します。
映像レビュー
巨大セットが生むリグのリアルな質感
UHDや4K配信が存在しないため、現状ではBlu-rayが最高画質。
パッと見でも十分に綺麗で、シャープさが圧倒的というほどではないものの、2016年作品のHD映像としてはかなり安定している。明るい場面では人物のアップから遠景まで大きく潰れることはなく、リグの細かな構造もしっかり確認できる。
特に印象的なのが、施設そのものの質感。漏れ出した泥や油、汚れた金属、長く使い込まれた設備などが非常にリアルで、実物の約85%サイズという巨大なリグセットを建造した労力が、そのまま映像の説得力につながっている。
暗い水中シーンではVFX由来と思われる柔らかさがあり、ややぼやけて見えるところもあるが、出番はそれほど多くないので大きな弱点には感じない。停電後の暗部も階調は良好。黒そのものはやや明るめだが、潰れすぎることなく状況を把握しやすい。
色彩はSDRらしく控えめ。作業員のオレンジ色の服は目立つものの、基本は金属や機械に囲まれた施設らしい地味な色調で、鮮やかさを前面に出す映像ではない。そのぶん、後半に炎が施設全体を覆い始めると一気に画面の印象が変わる。もしHDR化されていれば、炎や強い光源のインパクトはさらに増しただろうと思う。
4Kが当たり前になった今では解像度そのものに限界はあるが、今でも十分見応えのある画質。何より、巨大なリグが次々と崩壊していく映像には圧倒的な迫力がある。
事故の規模と現場の緊迫感をしっかり伝えるという点では、Blu-rayでも十分に強い映像だった。
音声レビュー
しっかりした低音だが、重さはそこまで。
衝撃音や爆発でもそこまで大きくはない。
方向感はあるが、それよりも圧倒的包囲感。
事故前から、リグの稼働音や響きが凄く良い雰囲気。
事故後はかなりの頻度でトップも活発になる。
この作品は、映像以上に音のインパクトが大きい。
Dolby Atmosをフルに活かしたサラウンドで、事故が始まってからはトップスピーカーを含め、空間全体がかなりの頻度で鳴り続ける。噴き出す泥や油、吹き飛ぶ金属片、燃え盛る炎、崩れていくリグ。一方向から何かが飛んでくるというより、あらゆる場所で同時に事故が進行しており、その混乱を全方位の音でそのまま再現しているような作り。
トップスピーカーの活用も多く、頭上を通る物体や施設内部の響き、炎や崩落など、高さ方向にも常に音があると感じるほど。ただしAtmosらしさは事故後だけではなく、水中映像や探査機、リグそのものの稼働音、施設内のアナウンスなど、事故前から細かく高さと奥行きを使っており、全編を通して丁寧に作り込まれている。
一方、意外にもダイナミックレンジはそこまで大きくなく、爆発は何度も起き、施設も激しく崩壊するが、衝撃音の一発一発や低音は想像したほど強烈ではない。LFEもリグの巨大さを感じさせる場面では使われるものの、部屋を大きく揺らすような重低音を連発するタイプではない。
ほとんど常に何かしらの音が鳴り続ける作品なので、全体のバランスを保つため意図的に一撃の強さを抑えたようにも感じる。あと一段パンチが加われば完璧だったとも思うが、それでもサラウンド作品としての完成度は非常に高い。
Atmos環境ならもちろん理想的だが、魅力の中心はトップだけではなく、前後左右を使った圧倒的な包囲感にある。5.1chや4.0chでも、この事故現場に放り込まれるような感覚は十分楽しめるはず。
ホームシアター向けの音声としては、ほぼ満点と言っていい仕上がりだった。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
泥水除去から事故へ
ほぼノンストップで怒涛の展開。音は全方位型で激しく。
総評
何人もの犠牲者を出し、米国史上最大の海洋原油流出事故へつながったディープウォーター・ホライゾン事故を映画化した作品。
実際の事故を経験した作業員たちが制作に参加し、さらに実物の約85%サイズという巨大なリグまで建造しただけあって、現場のリアリティはかなり高い。実際の状況は想像を絶するものだっただろうが、この映像からでもその一端は十分に伝わってくる。
利益や納期を守るため、ある程度の無理を求められる場面はどんな仕事にもあるだろう。ただ、それが巨大設備や高リスクな現場になると、少しの判断ミスや安全軽視が取り返しのつかない結果につながる。
大企業側と現場作業員の温度差や、上から判断を押し付けられるような構図も妙に生々しい。技術がどれだけ発達しても、それを扱う人間や組織の考え方が変わらなければ、同じようなことはまた起こるのではないかと思わされる。
Blu-ray映像はHD止まりながら、今見ても十分に良好。巨大なリグが崩壊していく災害の規模感もしっかり伝わる。そしてDolby Atmosをフル活用した全チャンネルを鳴らす包囲感が素晴らしく、事故後は周囲すべてが崩れていくような音場になる。サラウンド作品としては最上位クラスの一本だった。
扱っているのは重大な実話だが、映画としての緊迫感も高く、泥と油にまみれた役者たちの演技や、炎に包まれるリグの映像にも圧倒される。
感動を前面に出す実話映画とは少し違い、「なぜ事故は起きたのか」「安全を軽視すると何が起こるのか」を考えさせる、教訓的な意味でも価値のある作品だった。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
