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あらすじ
アベンジャーズとの戦いを経験した高校生ピーター・パーカーは、ニューヨークでスパイダーマンとして活動しながら、いつか本格的なヒーローチームの一員になることを夢見ていた。
しかし、トニー・スタークから任されるのは身近な事件への対応ばかり。学校生活との両立に悩みながらも、ピーターは自分の力を証明しようと一人で行動を続ける。
そんな中、アベンジャーズの戦いで残された異星技術を利用し、強力な武器を売買するエイドリアン・トゥームスとその一味の存在を知る。まだ未熟なピーターは、大人たちの制止を振り切りながら、自分なりの方法で事件へ立ち向かっていく。
作品レビュー
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』から直接つながる、MCU版スパイダーマン初の単独作品。
これまでのシリーズのように、蜘蛛に噛まれて能力を得るところから描き直すのではなく、すでにスパイダーマンとして活動しているピーターから始まるのが大きな特徴。過去作で何度も描かれてきたオリジンを省いたことで、今回は高校生活とヒーローとしての成長にしっかり時間を使えている。
ピーターはアベンジャーズ入りを夢見て、大きな事件へ関わりたがるが、トニー・スタークから見ればまだ高校生。街で自転車泥棒を止めたり、近所の人を助けたりする程度では物足りず、もっと自分の力を証明したいという若さが前面に出ている。
その一方で、学校では普通の高校生。親友ネッドとのやり取りや、リズへの片思い、ホームカミング・ダンス、ミシェルをはじめとした個性的なクラスメイトなど、学園映画としての空気もしっかりある。ヒーロー活動と高校生活の両方をこなそうとして、どちらもうまくいかなくなるところが今作らしい。
特にネッドに正体を知られてからの関係は面白く、秘密を共有したことでヒーロー活動が一気に身近なものになる。スターク製スーツに搭載された大量の機能やAI“カレン”とのやり取りも楽しいが、同時にピーターがスーツの力に頼りすぎていることも描かれている。
そこで効いてくるのが、トニーの「スーツがなければ何者でもないなら、それを着る資格はない」という考え方。スーツを失った後に、自分自身の力だけで立ち上がれるかを問われることで、ようやくピーターがヒーローとして一歩成長していく。
敵となるバルチャーも完全な悪というタイプではない。世界征服を狙うような大物ヴィランではなく、生活と家族を守るために犯罪へ進んだ人物。アベンジャーズの戦いの後始末から始まった仕事を奪われ、スタークたちの存在によって人生が変わってしまった側でもある。
ピーターがスタークに認められたい側だとすれば、バルチャーはスタークたちの巨大な力に生活を振り回された側。その対比が自然で、バルチャーの正体がピーターの日常と直結する展開もかなり効いている。マイケル・キートンの威圧感も強く、派手すぎないのに怖さのあるヴィランだった。
今作のピーターは善意で行動しているのに、未熟さのせいで事態を悪化させることも多い。ただ、それが高校生ヒーローらしく、失敗を重ねながら自分の身の丈を理解していく過程につながっている。アイアンマンも重要な存在ではあるが、出すぎることはなく、最後までピーター自身の物語として成立しているのも良かった。
巨大な事件が当たり前に起きるMCU世界を、高校生や普通の人々の目線から見る面白さがある。過去2シリーズとは違い、「若さ」と「未熟さ」をしっかり前面に出したことで、新しいスパイダーマン像を作ることに成功していた。
大きなヒーローになることだけがゴールではなく、自分の手が届く範囲を守るという、スパイダーマン本来の身近さを取り戻しながら、MCUへ自然に溶け込んだ作品だった。
メタデータ
映像レビュー
若いピーターとバルチャーを対比させるデザイン
画質そのものという意味では、4Kらしい強烈な特徴はあまり感じない映像。
本作はARRI ALEXA Mini/XT Plusを使用し、ARRIRAW 2.8K・3.4Kで撮影。最終的には2K DIで仕上げられており、4K版もそこからのアップスケールになる。実際の映像も、輪郭がビシッと立つようなシャープさではなく、人物のアップでも遠景でも、非常に細かいところまでハッキリ見えるタイプではない。
悪い画質というわけではないが、良質なBlu-rayでもこのくらいには見えると思える場面も多く、少なくとも解像感だけで「4Kらしい」と感じる作品ではなかった。
色彩や光についても、全編を通して鮮烈さを押し出すタイプではない。ただしDolby Visionによる階調表現はしっかりしており、暗い場面では黒をきちんと沈めながら、必要な光は残している。敵側の紫色に光る兵器や火花、炎などは暗部から綺麗に浮かび上がり、派手すぎないながらもHDRらしいコントラストは感じられた。
キャラクターデザインも作品の立場をよく表している。
『アメイジング・スパイダーマン』のような光沢の強いスーツとは違い、今作のスパイダーマンはマットで凹凸も控えめな、かなりシンプルなボディスーツ。まだ若く、ヒーローとして完成していないピーターには、この少し素朴な見た目がよく似合っている。
それに対してバルチャー側は、鋭い翼や無骨な兵器など、機械的で刺々しいデザイン。スパイダーマンの柔らかく若々しい見た目と、バルチャーの荒々しい装備が対照的で、それぞれの立場や性格まで映像から伝わってくる。
アクションでは見せ場も多く、少し『スパイダーマン2』を思わせるような場面や、ワシントン記念塔での高所アクション、フェリー、終盤の飛行機戦など、スパイダーマンらしい上下左右への動きを存分に楽しめる。ヒーローとしてまだ未熟なピーターらしく、動きにも危なっかしさがあり、それが過去シリーズとの差にもなっている。
4Kとして圧倒的な精細感を楽しむタイプではないが、Dolby Visionによる暗部と光のバランス、キャラクターデザイン、そしてスパイダーマンらしいアクションは十分に楽しめる。
画質単体では大きな驚きはないものの、作品の若々しさやキャラクター性をきちんと支えた映像だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
重さはあまり感じられず。
良いところもあるが、あと少し欲しかった。
スパイダーマンらしい動きの良さがある。
電車の中や、街の喧騒はしっかり。
様々に活用するが、印象はそこまで強くない。
一定のスパイダーマンらしさを備えたDolby Atmos音声。
ウェブを使った高速移動やバルチャーの飛行、フェリーや飛行機といった大きな乗り物まで、映像の動きに合わせたサラウンドはしっかり作り込まれている。
特にスパイダーマンとバルチャーが立体的に動く場面では、前後左右だけでなく高さ方向にも音が広がり、Atmosらしい空間表現を感じられる。ワシントン記念塔のエレベーター場面などもトップスピーカーが活きるシーンで、上下方向の距離感を自然に補強している。
今作ではアイアンマンも何度か登場するが、飛行時の音の移動はかなり分かりやすく、スパイダーマン以上に存在感を感じることもあった。
ただし、ダイナミックレンジはあまり大きくない。サラウンドデザイン自体は丁寧なのだが、一発一発の音にもう少し勢いが欲しい。銃撃や衝突、爆発といった場面でも、映像から期待するほど音圧が上がらず、全体的に迫力が不足している。
LFEも同様で、低音のパンチは控えめ。衝撃音にもっと重みがあれば、フェリーや飛行機などの大規模なアクションもさらに迫力が出たはずだが、そこまで身体に響くような低域は感じられなかった。
『シビル・ウォー』以降のMCU作品ではDTS:X版が増えていく中、トム・ホランド版スパイダーマンはDolby Atmosを継続している。単純にフォーマットだけで音の良し悪しが決まるわけではないが、DTS:X版MCU作品と比べると、音圧の面で一段控えめに感じる。そのため、移動感や包囲感は良いのに、アクション全体の印象が少し薄くなってしまう。
音自体は綺麗で、各チャンネルの配置も丁寧。Atmosらしい立体感もあるので、サラウンドとしての完成度は十分に高い。ただ、映像の動きに対して音の威力が少し追いついていない。
トビー・マグワイア版スパイダーマンシリーズのAtmos版がかなり派手な仕上がりだったこともあり、あそこまでではなくとも、もう少し音に力があれば、よりスパイダーマンらしい爽快なサウンドになったと思う。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
vs 銀行強盗
サラウンドは少し。最後の一撃は迫力。
vs 強盗
こまごまとトップを活用。しかし迫力薄め。
ワシントン記念塔でトラブル
エレベーターの崩れる響きに、ドローンとしっかりサラウンド。
フェリーでバトル
音的にはスパイダーマンやバルチャーよりアイアンマンが目立つ。
vs バルチャー
飛行機でのバトルは流石の派手さ。
総評
今やMCUを代表するヒットメーカーとなった、トム・ホランド版スパイダーマンの単独第1作。
これまでのスパイダーマンより幼さの残る雰囲気が高校生役にぴったりで、個人的には今までで一番しっくりくるピーター・パーカーだった。過去シリーズのような悲壮感の強い導入を改めて描かず、全体的にかなり軽快で爽やかな作風になっている。
すでにMCUで登場済みだったため、能力を得るまでの過程を省き、その分高校生活や人間関係をしっかり描けたのも良かった。アイアンマンとの絡みも単なる客演ではなく、トニーが未熟なピーターを導く師匠のような存在になっており、ヒーローとしての成長物語として自然にまとまっている。
映像と音声は、他のMCU作品や歴代スパイダーマンと比べて飛び抜けた特徴こそないものの、全体として安定したクオリティ。アクションもスパイダーマンらしい動きをしっかり楽しめた。
少し背伸びしながら悩むピーターと、相棒ネッドとのバディ感も非常に良く、高校生らしい空気もしっかり残っている。コメディ寄りの軽いノリを保ちながら、重すぎる事件に引っ張られることもなく、最後まで爽やかに楽しめる。
新しいスパイダーマンの始まりとして非常に見やすく、トム・ホランド版の魅力をしっかり確立した導入作だった。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
