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あらすじ
ニューヨークの高級ホテルに住みついたジェリーを追い出すため、猫のトムが雇われることになる。
ホテルでは大規模な結婚式を目前に控えており、新人スタッフのケイラもその準備に奔走していた。しかし、顔を合わせればすぐに争いを始めるトムとジェリーによって、ホテル内は次第に大混乱へと発展していく。
立場も目的も異なる人間たちを巻き込みながら、おなじみの追いかけっこが現実世界を舞台に繰り広げられる、実写とアニメーションを融合したコメディ作品。
作品レビュー
1940年から続く人気キャラクター、トムとジェリーを現代のニューヨークへ連れてきた実写長編作品。
舞台となるのは高級ホテル。大規模な結婚式を控えたホテルにジェリーが住みつき、それを追い出そうとするトムが現れたことで、いつもの追いかけっこが現実世界へ飛び出していく。シリーズを昔から知っている人にはお馴染みなのだろうが、自分はこれまでトムとジェリーをじっくり見たことがなかったが、それでもまったく問題なく楽しめた。
やはり一番面白いのは、トムとジェリーの関係そのもの。顔を合わせればすぐに争い、体を張ったギャグを延々と繰り返すのに、どこか完全には憎み合っていない。「仲良くケンカする」という表現が本当にしっくりくる。殴る、潰す、吹き飛ばすといった昔ながらのカートゥーン的な暴力表現も、あくまで動物パートだけなのでスラップスティックとして素直に笑える。
しかも二人はほとんど言葉を使わない。それでも性格や感情、次に何をしようとしているのかがしっかり伝わってくる。80年以上続くキャラクターが今でも通用する理由は、この分かりやすさと普遍性にあるのだと思う。ただ二人が暴れ回っているだけでも成立してしまう強さがある。
実写部分では、クロエ・グレース・モレッツ演じるケイラを中心に物語が進む。ホテルスタッフとして働き始めた彼女と、目前に迫った結婚式、その裏で暴れ回るトムとジェリーが絡み合い、ホテル全体を巻き込んだドタバタへ発展していく。
短編アニメのテンポを長編映画へ広げているため、人間側の物語が少し長く感じる部分はある。ただ、そこまで邪魔にはならなかった。トムとジェリーだけで長編を引っ張るには別の難しさもあるだろうし、この軽いノリの作品では、人間ドラマも一種のつなぎとして気楽に見られる。物語自体に強い重みを求める作品でもないので、多少の“おまけ感”も逆に気にならなかった。
映像面もかなり特徴的。実写の背景に2D風のアニメーションキャラクターを配置し、動物たちは基本的にアニメとして存在するという独特の世界観になっている。実際には3DCGを使いながら、昔ながらの2Dルックを再現しており、その不思議な質感が実写世界へ意外なほど自然に馴染んでいる。リアル寄りに作り直さず、オリジナルのデザインを崩さなかった判断はかなり良かったと思う。
ファミリー映画としても見やすく、最後に描かれるのも、表面的な経歴や肩書きだけではなく、その人が実際に何をしてきたのかを見るという等身大のテーマ。大げさに説教臭くならず、作品の軽さを保ったままきれいに着地している。
独特の映像表現を見るだけでも面白いし、何よりトムとジェリーが暴れ回っているだけで画面が持つ。そのシンプルな強さこそが、80年以上愛され続けてきた理由なのだろう。
メタデータ
映像レビュー
実写背景へ自然に溶け込む2D風CGキャラクター
まさに「これぞ4K」と言いたくなる、非常に美しい映像。
Sony VENICEを使用し、6K X-OCN STで撮影された素材から4K DIマスターを制作。解像感はかなり高く、マンハッタンの街並みは風景映像を見ているようなクリアさ。人物の近景でも肌やシワ、ヒゲまで細かく確認でき、これ以上の精細感は必要ないと思えるほどシャープな映像になっている。
ジェリーの視点まで降りると、その解像感の高さがさらに面白い。床付近や天井、ホテルの裏側といった普段あまり注目しない場所まで細かく描かれ、画面の隅々までビシッとピントが合っているような印象を受ける。実際にはニューヨークで撮影した実景と、英国でのロケやセットを組み合わせて作られているが、知らずに見ればまず気付かないほど自然にひとつの街として成立していた。
基本的に明るい場面が多く、Dolby Visionとの相性も良い。高級ホテルや結婚式という舞台らしく、シャンデリアや照明、指輪の宝石などの輝きが暗部からしっかり浮かび上がり、明暗のコントラストも非常に美しい。
色彩も明るくポップで、実写背景の中でもアニメキャラクターが埋もれないよう細かく計算されている。キャラクターだけが不自然に浮くのではなく、「目立っているのに馴染んでいる」という絶妙なバランス。市場に並ぶ魚のような細かな部分までアニメーションとして描かれており、派手なVFXを見せつける作品とは違った方向で手の込んだ映像になっている。
そして今作最大の特徴が、2Dアニメそのものに見えるキャラクターを立体的な実写空間へ存在させた映像表現。
実際には3DCGをベースに制作されているが、昔ながらの2Dアニメのルックを崩さず、立体感だけを自然に加えている。そのため見た目はいつものトムとジェリーなのに、実写空間の中では奥行きや距離感を持って存在しているという、不思議な感覚がある。
動きも3D化によって大人しくなることはなく、昔ながらの大げさなカートゥーン表現をそのまま維持。飛び跳ねる、潰れる、吹き飛ぶといった高速なアニメーションは実写世界でもインパクトがあり、スピード感も抜群だった。
完全にギャグのような動きをしているのに、それを見ている人間側のリアクションも自然で、この世界ではそれが当たり前に存在しているように感じられる。光沢のある床にはキャラクターの姿まできちんと反射し、実写空間の光や材質との関係まで細かく処理されているため、アニメでありながら確かな存在感がある。
派手なSF作品のようなVFXとはまったく違う方向性だが、その精緻さはかなりのもの。どこまでもシャープな実写映像と、2Dルックを維持したアニメーションを違和感なく融合した、現代的な4K/Dolby Vision映像だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
BGM以外ではそこまで重さを感じない。
衝撃音の強さは悪くなく、鋭さも感じられる。
リアも使うがトップが更に多め。
街中やパーティーとホテル内の対比は悪くない。
かなり細かな使い方で素晴らしい。
トムとジェリーの縦横無尽な動きを、Dolby Atmosでしっかり立体化したサラウンド音声。
単なるコメディ作品と思いきや、トムとジェリーの動きは実写世界へ移っても相変わらずめちゃくちゃ。画面内を上下左右へ飛び回るため、それに合わせた音の移動も多い。
特に印象的なのがトップスピーカーの活用。リア方向よりも使用頻度が高いくらいで、エレベーターやドローン、雷といった分かりやすい高さ表現だけでなく、文字が上から降ってきたり、キャラクターが画面外へ吹き飛んだりと、カートゥーンならではの動きにもAtmosを積極的に使っている。
派手な場面だけではなく、何気ないシーンでもトップが自然に鳴るため、単発のデモ的なAtmosではなく、作品全体の空間表現として高さ方向を利用しているのも良かった。
リア方面では、トムとジェリーの追いかけっこや、二人が一緒に動く場面で特に効果を発揮する。スピーディーな動きに合わせて音も前後左右へ移動し、キャラクターが画面内を走り回る感覚をサラウンドでもしっかり追える。映像ほど大げさではないものの、移動感は十分に楽しめた。
一方で、ダイナミックレンジはそれほど大きくない。アニメ調の作品らしく、強烈な爆発音や一気に音圧が跳ね上がるような場面は少なく、全体的に軽快なバランスになっている。
低音もかなり控えめ。ゾウが登場するような場面でも体を揺らすほどのLFEはほとんど感じられず、むしろラップ調のBGMなどで存在感が出る程度だった。
ただ、その軽さは作品の映像表現にはよく合っている。トムとジェリーの動きにいちいち重量感のある低音を付けてしまえば、カートゥーンらしいテンポや軽快さが失われてしまうため、このバランスに違和感はない。
迫力重視よりも、トップを含めた空間全体へ細かな音を配置し、キャラクターの動きを立体的に見せるタイプの音声。内容自体も軽快なので、映像のドタバタをそのまま音へ拡張したようなDolby Atmosサウンドだった。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
雷雨での追っかけ
はっきりした雷の音に、室内のドタバタでもトップを活用。映像はクスっと笑える。
ロビーでもみくちゃ騒動
アニメらしい表現で移動しながらグルグル大暴れ。サラウンドは少し。
結婚パーティーで動物大暴れ
トムとジェリーにゾウや鳥など暴れまくって音も賑やかに。
スケボーで協力プレイ
スケボーとドローンの動きで、派手にサラウンド活用。
総評
『トムとジェリー』は知ってはいたものの、これまでじっくり見たことはなかった。
いつもドタバタと追いかけっこをしているイメージだったが、その持ち味を現実世界へうまく持ち込んでいて、実写とアニメの組み合わせにも意外なほど違和感がない。有名映画を思わせるちょっとした動きや小ネタも挟みつつ、コメディの中に軽い人間ドラマを加えた構成で、全体のバランスも悪くなかった。
CGで描かれた動物たちはしっかり目立つのに、実写世界から浮いて見えないのが面白い。トムとジェリーはほとんど話さないのに、人間たちと普通にコミュニケーションが成立しており、この世界ではそれが当然のこととして受け入れられている。その不思議な感覚も本作ならではだった。
そして意外だったのが、ホームシアター作品としての完成度の高さ。4Kらしさを存分に味わえる圧倒的な解像感に、2Dルックを残した精緻なCGアニメーション。さらにDolby Atmosでは、キャラクターの動きを追う細かなサラウンドやトップスピーカーの活用まで楽しめる。
これまで『トムとジェリー』に強い思い入れがなかった自分でも十分に楽しめた。深く心に残るタイプの作品ではないが、非常に軽快でサラッと楽しめるし、4K/サラウンド環境があるなら尚更オススメの一本だった。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
