作品データ
あらすじ
ゾンビ感染によって封鎖されたラスベガス。かつて街から生還した元傭兵スコットのもとへ、カジノの地下金庫に眠る巨額の現金を回収してほしいという依頼が舞い込む。
爆破による街の消滅まで残された時間はわずか。スコットはそれぞれ異なる能力を持つ仲間を集め、ゾンビが支配する隔離区域へ潜入する。しかし街の内部では、彼らが知るゾンビとは異なる存在が独自の秩序を築いていた。
大金を狙う強盗計画とゾンビサバイバルを組み合わせた、ザック・スナイダー監督によるアクションホラー。
作品レビュー
ザック・スナイダーが監督デビュー作である『ドーン・オブ・ザ・デッド』以来、約17年ぶりに撮ったゾンビ映画。とはいえ純粋なゾンビホラーではなく、強盗映画と傭兵アクションを組み合わせた作品で、恐怖よりも派手なエンタメを前面に押し出している。
舞台はゾンビ感染によって完全封鎖されたラスベガス。街そのものが核攻撃で消滅するまでの限られた時間で、カジノ地下の巨大金庫から大金を持ち出すという目的は非常に分かりやすい。
デイヴ・バウティスタ演じるスコットを中心に、金庫破り、狙撃手、ヘリ操縦士など、それぞれ違った能力を持つメンバーが集められていく構成も強盗映画らしく、この寄せ集め感と個性的な面子も面白い。カジノのオーナー・タナカを演じる真田広之も短い出番ながら存在感があり、物語の発端となる依頼人としてしっかり印象を残している
そして相手もまた単純な大量ゾンビだけではない。街にはゼウスを頂点として、知性や社会性を持つ「アルファ」と呼ばれるゾンビたちが独自の秩序を築いており、ある程度の意思疎通が出来る。その下には大量の一般ゾンビが存在しており、さらにゾンビ化した虎まで登場し、怪物映画のような楽しさまで盛り込まれている。煌びやかなカジノと荒廃した街並みが同居するラスベガスも舞台として抜群で、スローモーションや残酷描写、派手な銃撃戦といったスナイダーらしい演出との相性もいい。
上映時間は約2時間半と長く、本格的な強盗へ入るまで比較的じっくり進む。それでも仲間同士の疑念や裏切りを絡めることで、ゾンビ以外にも緊張の種を作っている。物語の中心にはスコットと娘ケイトのすれ違った親子関係があり、最終的には大金よりも家族や仲間をどう選ぶのかという部分へつながっていく。
本作ではスナイダー自身が撮影監督も務め、極端に浅い被写界深度を多用した独特の画作りも特徴的。Netflix大作らしい映像と音響を存分に楽しめる一方、世界観にはあえて説明されない謎や伏線も数多く残されている。
金庫破りのディーターは前日譚『アーミー・オブ・シーブズ』の主人公にもなり、本編のその先を描くシリーズ展開も想定されていたが、現在は止まった状態なのが惜しい。
ゾンビ映画としての怖さを求める作品というより、ラスベガスを舞台にゾンビ、強盗、傭兵、家族ドラマまで全部乗せした派手な娯楽大作。かなり欲張りな内容だが、そのごった煮感こそが本作ならではの魅力だった。
メタデータ
映像レビュー
8K RAW撮影と4K DIによる高精細なラスベガスの街並み
乾燥した晴天のラスベガスらしい、明るく見通しの良い映像。
全体的に明るめの絵作りで、夜間や暗い建物の中でも黒が潰れるような場面はほとんどない。ゾンビやキャラクターの姿をしっかり確認できる視認性の高さを重視した印象で、個人的にはもう少し黒を深く沈めた方が雰囲気は出たと思うが、ストレートなホラーよりアクション寄りの本作にはよく合っている。
IMDbの技術仕様では、RED Monstroによる8K RAW撮影から4K Digital Intermediateで仕上げられたネイティブ4Kクラスの制作フロー。解像感は非常に高く、荒廃したラスベガスの街並みや、その中を大量のゾンビが走り回る場面まで細かく描写される。ゾンビのアップでも特殊メイクの粗さを感じにくく、質感表現もかなり自然に仕上がっている。
一方で、画面の一部だけにピントを合わせて周囲を大きくぼかす場面がかなり多い。これは画質の甘さではなく、ザック・スナイダー自身が撮影監督を務め、非常に明るいCanon Dream Lensなどを使って極端に浅い被写界深度を狙った意図的な撮影スタイルになっている。好みは分かれそうだが、本作ならではの映像的な特徴になっている。
Dolby Visionによるコントラスト表現も良く、燃え盛る炎やカジノの電飾は鮮やか。黒を深く沈めるタイプではないものの、明るい屋外から暗い屋内まで階調は安定しており、視覚的には非常に見やすい。
冒頭の夕暮れについて、限られた自然光を狙って何週間も撮影したというエピソードもスナイダーらしいこだわり。また、ヘリ操縦士ピーターズ役のティグ・ノタロは後から差し替えられ、多くの場面を他の俳優がいない状態で撮影して既存映像へ合成している。完成映像ではほとんど違和感がなく、荒廃したラスベガスの街並みも含め、こうした目立たない部分でもVFXの完成度の高さを感じる。
驚くほど自然で高度な映像技術を用いた、大きな欠点のない高品質な4K映像だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
銃撃の重み付けがメインだが、一部はしっかり重低音。
銃声、ゾンビ、BGMと何でもデカい。
フロント以外の動きが少なめ。
荒野の空気感くらいで、静かなラスベガス。
BGMを鳴らす以外は、わずかな効果音のみ。
迫力にかなり振り切った音声。
ゾンビ映画らしく銃撃戦が非常に多く、その一発一発にしっかりとしたアタックがある。ゾンビ側の叫び声や唸り声も力強く、アクションへ入ると一気に騒がしくなる。
さらにBGMの主張もかなり強い。銃声に負けないほど大きく鳴るため、戦闘シーンでは音楽、銃撃、ゾンビの声が重なり、とにかく賑やか。音の種類そのものはそれほど多彩ではなく、基本的には銃撃で押し切る場面が多いが、その分ストレートな迫力は十分にある。
低音は意外にも常時強烈というほどではなく、主に銃声の重量感を補強する程度。ただし一部ではかなり強く沈み込み、場面ごとのメリハリはついている。
その一方で、これだけ大量のゾンビが走り回り、銃を撃ち続ける映像に対して、マルチチャンネルの使い方はやや控えめに感じた。リア側を明確に使う場面はいくつかあるものの、常に周囲を音が飛び交うような設計ではない。
Dolby Atmosによるトップスピーカーの活用も同様で、高さのあるホテルやカジノを舞台にしている割には、頭上を強く意識させる場面は少なめ。とにかくフロントの密度と押し出しが強く、それが印象の大半を占めるため、リアやトップが相対的に目立ちにくいとも感じた。
それでも迫力だけで見ればNetflixオリジナルの中でもかなり上位。繊細な包囲感よりも、銃撃とBGMを大音量で一気に浴びるタイプのサラウンドで、特徴が非常に分かりやすい。音量をしっかり出せるホームシアターほど楽しみやすい作品だった。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
事故で積荷が落下
定番の展開からスタート。迫力重視でサラウンドは少し。
ゾンビの大群を通り抜ける
ひたすら銃撃とBGMで押しまくる。
ゾンビの逆襲
脱出へ向けての最終局面。最後は少しサラウンドも使って大迫力。
総評
ラスベガスを舞台にした作品ではあるが、物語そのものは場所を選ばず成立しそうなシンプルな構成。
ゾンビ発生の原因や世界の謎を掘り下げるよりも、主人公スコットと娘ケイトの確執、そして危険な街へ向かう寄せ集めチームの掛け合いを中心に進んでいく。ジャンルとしてはホラーアクションだが、多少の残酷描写はありつつも、怖がらせることを主目的にした作品ではなく、かなりアクション寄りだ。
一方で、意思疎通ができるアルファゾンビたちは単なる敵役以上の存在感があり、場面によっては人間側よりも彼らの方が主人公らしく見えるのも面白い。一般的なゾンビ映画とは少し違うルールや社会性を持たせたことで、変化球のゾンビものとして楽しめた。
ホームシアターとの相性も良く、映像はNetflix大作らしい安定した4K画質。音声は精緻な包囲感よりも迫力重視で、銃撃とBGMを強烈に押し出してくるタイプなので、大音量で楽しめる環境ほど魅力が増す。
金庫破りのディーターには前日譚まで制作され、世界観をさらに広げる構想も用意されていた。含みを持たせたラストを見ると、その先を見てみたかっただけにシリーズ展開が止まっているのは少し惜しい。
ザック・スナイダーのゾンビ映画への回帰作だが、DC作品で見せた重くダークな雰囲気とは少し違い、派手で明るく、比較的サラッと楽しめる娯楽作。ゾンビ、強盗、傭兵アクションを全部まとめて楽しむタイプの一本だった。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
