作品データ
あらすじ
ニューオーリンズの街で、服用するとわずか5分間だけ特殊能力を得られる謎の薬“パワー”が流通し始める。
能力は飲んでみるまで分からず、超人的な力を得る者もいれば、命を落とすほど危険な反応を起こす者もいた。薬の拡散によって街の犯罪が激化する中、地元警官フランク、薬を売る少女ロビン、そしてある目的を持って薬の出所を追う元兵士アートの三人が交差していく。
それぞれ異なる立場から“パワー”の正体へ迫るうち、その背後にある実験と計画が次第に明らかになっていく。
作品レビュー
『プロジェクト・パワー』は、5分間だけ超能力を得られる薬“パワー”という、非常に分かりやすく強い設定を軸にしたSFアクション。
面白いのは、薬を飲むまでどんな能力が発現するのか分からないこと。強力な力を得る者もいれば、命に関わる危険な反応が出る者もいる。能力そのものにも当たり外れがあり、日本人なら『ONE PIECE』の悪魔の実を少し連想するところもある。
そのうえで、超能力を生まれ持った才能ではなく“商品”として扱う世界観が良い。薬さえ手に入れば誰でも力を得られるため、当然そこには犯罪、金、利権が絡んでくる。スーパーヒーロー物の要素を、薬物犯罪や裏社会の構造へ落とし込んだ発想はかなり好みだった。
物語は、元兵士のアート、警官フランク、少女ロビンという立場の違う3人を中心に進んでいく。それぞれが別々の目的を持ちながら、最終的には同じ事件へ収束していく構成。アートの行動は家族と深く結びついており、フランクは警官でありながら自らパワーを使用するという矛盾を抱えている。ロビンも単なる巻き込まれ役ではなく、物語の中心人物としてしっかり存在感を持っている。
能力の発想を動物の特性から広げているのも特徴で、炎、透明化、硬化、巨大化など、発現する力によって見た目も戦い方も大きく変わる。さらに能力が続くのはわずか5分。その時間制限によって戦闘に緊張感が生まれ、使えば必ず有利になるわけではないところも面白い。
その一方で、パワーの裏側には人体実験や倫理問題があり、弱い立場の地域や人々を実験対象として扱う構図も描かれる。誰が力を持つべきなのか、能力を管理する権利は誰にあるのかというテーマもあり、結局重要なのは“力そのもの”ではなく、それを誰がどう使うかという点に行き着く。
一般的なヒーロー映画よりも犯罪映画やスリラー寄りの雰囲気が強く、アクションは派手でも能力を次々と見せ続けるタイプではない。2020年のNetflixオリジナル大作らしい制作規模で、完全オリジナルのスーパーパワー映画として映像的な見応えは十分だった。
ただ、物語自体は比較的王道でドラマ部分も多いので、設定がかなり面白いだけに、個人的にはもう少し多彩な能力を使った戦闘をバリバリ見せてほしかったところ。
それでもキャスト、映像、コンセプトの強さで十分楽しめる。超能力と犯罪を結びつけた発想が魅力の、手堅い娯楽SFアクションだった。
メタデータ
映像レビュー
画面全体を隅々まで描く圧倒的な4K解像感
めちゃくちゃ綺麗な4K映像。
画面の隅々までしっかりフォーカスが合ったタイプで、冒頭の夜景を見ただけでも高画質だと分かるほど解像感が高い。人物のアップだけでなく、背景や小物まで細部がきっちり描かれ、画面全体が非常にシャープ。
これだけクリアな映像ながらフィルムグレインもしっかり残っており、デジタル的にツルツルしすぎない質感も好印象。ディテールの描写は非常に安定していて、目立つ粗さはほとんど感じない。
黒もかなり深く、そのぶんパワー発動時のオレンジや街の照明が鮮やかに映える。特に炎を操る能力者のシーンは素晴らしく、暗い背景に強い光が浮かび上がり、Dolby Visionらしいコントラストの高さを実感できる。
街中や港、船内、室内など、アクションの多くは暗い場所で展開される。アップを多用したスピード感のある撮り方なので迫力は十分だが、場面によっては状況を追いにくく感じるところもある。
それでも画面全体のシャープさは最後まで崩れず、暗部でも質感をしっかり保っている。Netflixオリジナル作品の中でも、かなり上位に入る画質だと思う。
4KとDolby Visionの強みを素直に活かした、非常に完成度の高い映像だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
能力による重みの表現は良し。
キレのある音で、迫力は素晴らしい。
方向感や移動はそこまで。
あるけど小さく、あまり目立たない。
個別よりも全体での広がりを補強。
全体的な広がりをかなり意識したDolby Atmos音声。
中でも印象的なのが、パワーを得るためにピルを飲む場面。鮮やかな映像表現と同時に音が一気に空間へ広がり、作品の核となる“パワー”そのものを体感させるような演出になっている。
序盤の炎を操る能力者の場面もサラウンドの使い方が派手で、包囲感はかなり強い。少し大げさなくらい空間全体を鳴らし、超能力の異常さを音でも強調している。
その一方で、細かな方向感や音が一点から一点へ移動するような表現はそれほど多くない。巨大化や身体強化といった能力では音の重さや広がりが増し、それぞれの“力”を音の質感で感じさせるような設計に思える。
トップスピーカーも使われるが、明確に頭上へ音を置く場面はそれほど多くない。ピンポイントの高さ表現というより、全体の音場をさらに大きくする一部として使われることが中心。
それでも派手さは十分で、銃声にはしっかりパンチがあり、能力発動時の低音や衝撃音も力強い。細かく追うというより、全身で浴びるような音の気持ちよさがある。
BGMもかなり大きく存在感があり、アクションシーンでは映像と重なって迫力をさらに押し上げる。
細かな定位を楽しむタイプではないが、アクション作品としての水準は十分。物語の中心にある“パワー”を、広がりと重量感で体感させるようなサウンドだった。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
vs 売人
ファイアパワーでかなりの派手さ。ここが作中一番かも。
銀行強盗を追いかける
サラウンドは全体で、広がりは素晴らしい。
組織のメンバーと対決
銃声が鋭く気持ちの良い音。サラウンドは少々。
パワーのデモンストレーション
ピルやBGMが派手、銃声も派手。
娘を奪還へ
基本は殴り合いで、最後の一発のみ凄い。
総評
誰でも薬を飲めば能力を得られる一方、効果はわずか5分間という設定がまず面白い。
日本の漫画やアニメにありそうな発想ではあるが、Netflixオリジナルらしくしっかり予算をかけて映像化されており、能力ごとの見せ方には見応えがある。炎や身体強化など、それぞれの力を視覚的に分かりやすく表現しているのも良かった。
物語の軸はあくまで家族で、巨大組織を相手にする展開ではあるものの、世界規模の危機へ広がるタイプではない。そのため雰囲気としては、スーパーヒーロー映画というより犯罪アクションにSF要素を足したような印象が強い。
舞台もいわゆる巨大都市の派手さより、ニューオーリンズらしい少し湿った空気感のあるロケーションが中心。キャラクターもそれぞれ立場が違い、3人の関係性も悪くないため、作品としての個性はしっかり感じられた。
一方で、設定がかなり魅力的なだけに、もっと能力を前面に出したバトルを見たかった気持ちは残る。世界観を広げればいくらでも派手にできそうな題材なので、その点では少し物足りなさもあった。
映像は非常に高品質で、4K/Dolby Visionで観る価値があり、音声も細かな定位より、空間全体へ広がるような力強さがあってホームシアター向きでもある。
配信オリジナルとしては制作規模も大きく、特に映像面の力の入り方はかなりのもの。気軽に楽しめるオリジナルSFアクションとしては、十分に満足できる佳作だった。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
