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あらすじ
身代金目的で、裏社会の大物の娘である12歳の少女アビゲイルを誘拐した犯罪者グループ
。彼らに課された仕事は、郊外の大邸宅で一晩少女を監視するだけのはずだった。
しかし、閉ざされた屋敷の中で仲間が次々と襲われ始め、状況は一変する。
やがて彼らは、自分たちが誘拐した少女が普通の人間ではないことに気付く。
逃げ場のない邸宅を舞台に、狩る側と狩られる側が逆転していくサバイバルが始まる。
作品レビュー
『アビゲイル』はちょっと変わり種の吸血鬼映画だ。
誘拐映画として始まりながら、気付けば狩る側と狩られる側が完全に逆転していく構成になっている。
犯罪者グループに与えられた仕事は、身代金の支払いを待つ間、少女を一晩監視するだけ。
簡単に終わるはずだった計画が、次々と崩壊していく過程にはテンポの良さがあり、早い段階から先の読めない展開へ引き込まれる。
集められた犯罪者たちは意外と個性的で、それぞれ得意分野や性格も違う。
ただし、あくまで寄せ集めのチームなので互いを信用しておらず、少し状況が悪くなるだけで疑心暗鬼に陥る。その不安定さが、密室サバイバルとしての面白さにも繋がっている。
主人公ジョーイは、その中では比較的冷静で、アビゲイルに対しても最初から一人の子どもとして接する人物。だからこそ二人の距離感には少し特別なものがあり、単純な捕食者と獲物の関係だけでは終わらない。
そしてやはり強烈なのが、可憐なバレリーナ少女と残虐な吸血鬼というギャップだ。
何世紀も生きている存在でありながら、しっかりと少女らしさが残っており、そのアンバランスさがキャラクターとして非常に面白い。ダンスの動きをそのまま攻撃へ取り入れたアクションも独特で、遊び心のあるアビゲイルのスタイルに馴染んでいた。
吸血鬼の弱点についても「映画ではこうだった」と登場人物たちが確認し合うメタ的なやり取りがあり、効果があったり無かったりと、古典ホラーへの愛情を残しつつ独自ルールを加えている。
そして血の量が多く、馬鹿みたいに吹き出し、時には派手に弾け飛ぶ。
そのため怖さよりブラックコメディ色の方が強く、グロテスクなのに妙に爽快感がある。
誰が最後まで残るのか分からず、状況も何度かひっくり返るため、群像劇としても退屈しない。
古典的な吸血鬼ものを現代的に崩しながら、バレエ、犯罪、密室サバイバルを混ぜ込んだ、少し変わった吸血鬼映画として悪くない一本だった。
メタデータ
映像レビュー
薄暗い屋敷でも細部まで見通せるシャープな映像
ほとんど欠点のない、非常に完成度の高い映像。
物語の大半は屋敷の中で進み、遠景を大きく見せる場面も少ない。それでも画面全体は常にビシッとピントが合っており、暗めのシーンが続いてもぼやけることがない。
現代作品らしいシャープで見通しの良い画質が、最後まで一貫している。
屋敷の内部には各所に照明が置かれているため、ホラー作品にありがちな「暗すぎて何が起きているのか分からない」という場面はほとんどない。木造の古びた館に並ぶ調度品や装飾は細部までよく見え、そこへオレンジ色の柔らかな光が重なることで、古典的な雰囲気と現代的な映像美がうまく両立している。
一方で、外から差し込む明るい光や青みがかった地下室では、色温度が大きく変わり、場所ごとに映画の空気まで切り替わる。
Dolby Visionの効果もあるのか、閉鎖的な屋敷が舞台ながら、画作りに単調さを感じさせないのは好印象だ。
ホラーらしい気味の悪さもきちんとあり、特にアビゲイル用のプールは、見た目だけで臭いまで伝わってきそうな絶妙な不快感がある。
そして本作らしいのが、画面いっぱいに飛び散る血しぶきだ。
ゲロのように血を吐いたり、刺された瞬間に勢いよく噴き出したり、人体そのものが弾け飛んだりと、完全にスプラッター寄り。それでも不快感だけを狙うのではなく、少し笑えてしまうほど派手に見せることで、ブラックコメディとしての軽さも保っている。
どれだけ血が飛び散っても映像は崩れず、細かな質感までしっかり描き切る。
配信作品としては十分すぎるほど高品質で、暗所、照明、質感、スプラッター表現のどれを取っても安定感の高い映像だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
あまり使わず、重さもそれほど。
銃撃や爆発はキレがある。
後ろもあるが、上の方がはっきり。
ほぼ屋敷なので、無いに等しい。
きちんと鳴るべきところで鳴る。
Dolby Atmosをきちんと活かしながら、派手さよりも場面ごとの変化を楽しませるサウンド。
全編を通してみると、サラウンドが常に活発に動き続けるタイプではない。
前半は誘拐後の会話や人物紹介が中心で、中盤以降に狩りとアクションが増えていく構成なので、音場もそれに合わせて徐々に広がっていく。
Blu-rayでは7.1ch収録だが、真後ろのチャンネルを積極的に使う場面は意外と少ない。
ホラー作品でありがちな「背後から何かが迫ってくる」ような定番の演出にはあまり頼らず、リアよりもトップスピーカーの方が存在感を示す場面が多かった。
高さ方向の使い方には意外とバリエーションがあり、屋敷の仕掛けやアビゲイルの動きなど、その時々に合わせて違う音を上から加えてくる。
同じパターンを何度も繰り返さないため、派手さは控えめでもAtmosらしい立体感はしっかり感じられる。
中でも象徴的なのが、人体が弾け飛ぶ瞬間のサウンド。
鋭い破裂音が一気に広がり、短いながらも包囲感が強く、映像のスプラッター表現と相まって非常に気持ちの良いインパクトを残す。
セリフはかなり明瞭で、アクションやBGMに埋もれることがほとんどない。
ダイナミックレンジは極端に大きくないものの、その分会話とのバランスは良く、長時間観ても疲れにくい。
低音も控えめで、ジャンプスケアや不穏な空気作りに重低音を多用するタイプではない。
ホラーとしてはかなり心臓に優しい部類で、驚かせるよりもキャラクターとアクションを楽しませる音作りだ。
サラウンドの派手さだけを求めると物足りなさはあるが、トップスピーカーの使い方には個性があり、作品のブラックな軽さにもよく合ったAtmosだった。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
狩りの時間
屋敷の仕掛けや、アビゲイルの動きでしっかり上を使う。後ろはそこそこ。
血みどろバトル
弾け飛ぶ映像と音が気持ち良いくらい。サラウンドはそこそこ。
総評
ホラーというより、派手なスプラッターとブラックコメディを楽しむタイプの作品。
とにかく血の量が多く、人体が弾け飛ぶ描写もかなり豪快。それでも必要以上に陰惨な雰囲気にはならず、あまりの勢いに思わず笑ってしまうような軽さがある。
グロテスクな場面はあるものの、ジャンプスケアや不気味さでじわじわ怖がらせる作品ではないため、純粋な恐怖を求めるホラーとは少し方向性が違う。
少女のヴァンパイアという見た目も印象的で、獲物を弄ぶように狩っていく姿はキャラクターによく合っていた。古典的な吸血鬼映画の要素を残しながら、少しずつルールや見せ方を変えているので、展開にも飽きにくい。
映像面では暗い屋敷が中心ながら見通しが非常に良く、スプラッター表現まで高精細。
音声も派手すぎないAtmosながら、閉鎖空間や高さ方向をうまく使って作品の雰囲気を支えている。
血しぶきが派手に飛び散るタイプの作品が苦手でなければ、テンポも良く、難しく考えず最後まで楽しめる一本だ。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
