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あらすじ
末期の病を抱え、ホスピスで暮らすサミラは、愛猫フロドとともにニューヨークを訪れる。
しかし街には突如として正体不明の生命体が襲来。
音を立てた者を容赦なく襲う怪物によって、人々であふれていた大都市は一瞬にして静寂と混乱に包まれていく。
逃げ場を探す中、サミラはひとりで生き延びようとしていた青年エリックと出会う。
生存者たちが街から脱出しようとする一方、すでに自らの死を意識していたサミラには、避難とは別にどうしても向かいたい場所があった。
崩壊していくニューヨークを進みながら、偶然出会った二人は次第に互いを支え合い、それぞれに残された時間と向き合っていく。
作品レビュー
『クワイエット・プレイス』シリーズの前日譚として、クリーチャーが地球へ襲来した“その日”をニューヨークを舞台に描く。
前2作では、すでに崩壊した世界でどう生き延びるかが中心だったが、本作では社会そのものが一気に壊れていく瞬間を見ることができる。空から隕石状の物体が降り注ぎ、そこからクリーチャーが現れることで、シリーズでは断片的だった襲来当日の混乱がようやく具体的に描かれた。
主人公サミラは末期の病を抱えており、世界が終わる前から自分の死を意識している。そのため、周囲の人々が必死に「どう生き延びるか」を考える中で、彼女だけは少し違う目的を持って行動する。この設定が本作最大の特徴で、生き残るために逃げるのではなく、残された時間をどう使うのかという物語にもなっている。
途中で出会うエリックとの関係も、恋愛に寄せすぎず、極限状態で偶然出会った二人が互いを支える形なのが良かった。さらにサミラの愛猫フロドも重要な存在で、精神的な支えであると同時に二人をつなぐ役割を持つ。
一方で、音に関する設定はこれまでと同じく都合の良い場面もある。これほど音に敏感なクリーチャーがいる世界で、猫が不自然なくらい鳴かない。クリーチャーのすぐ近くにいる時ですら全く動じない。
更に真横まで接近しても人間の呼吸音や心臓の鼓動には反応しない場面もあるし、映画とは分かってはいるものの、多少気になる部分ではあった。
前作までですでにクリーチャーそのものは十分描かれていたため、今回は続編ものの定番ともいえる“大群化”でスケールを拡大。大量のクリーチャーがニューヨークを駆け回る光景は単純ながらやはり楽しく、人だらけだった大都市が一瞬で「音を出せない場所」に変わる面白さもある。
さらにジャイモン・フンスー演じるアンリが登場し、『Part II』へつながる過去もさりげなく補完される。シリーズものとしての繋がりを意識しながら、本作単体でも理解できる程度に留めているのはちょうど良かった。
すでに死を受け入れかけている者を主人公に据え、危険だと知りながらも、街に繰り出す理由付けにもなっている。その過程でサミラ自身が何を求め、誰と時間を共有したいのかが浮き彫りになる。この視点が、家族を守ることを中心にしてきた前2作との大きな違いになっている。
それでも作品は人間ドラマだけに寄りすぎず、地下鉄、街中、建物内と場所を変えながら断続的にクリーチャーが出現する。危機が次々に訪れるジェットコースターのようなテンポで、モンスターパニックとしてのエンターテインメント性もしっかり強い。
喪失や死を扱う人間ドラマと、遠慮なくクリーチャーを見せる娯楽性。
その両方を持った作りが自分にはかなり合っており、シリーズの中でもまた違った面白さを楽しめる作品だった。
メタデータ
映像レビュー
大都市の精細感と、大群で描かれるクリーチャーのスケール感
シリーズの中でも、より現代的な方向へブラッシュアップされた映像。
冒頭のニューヨーク高層ビル街から、非常に精細感の高い映像を見せてくれる。輪郭を過度に強調するようなシャープネスではないが、建物の細部や街を行き交う人々まで自然に描き分けられ、4Kらしい情報量は十分に感じられる。
撮影では実際のセットを大規模に作り、そこへニューヨークの建物データを使って背景を拡張しているが、実写とVFXの境界はほとんど分からない。大量の人々が逃げ惑う街や、無数のクリーチャーが建物の間を駆け回る場面でも映像は破綻せず、高層建築や道路の高低差を利用したダイナミックな構図が増えている。
シリーズ3作目ともなると、クリーチャー単体を近くでじっくり見せることよりも、襲来直後の“大量発生”をどう見せるかへ重点が移った。ビルの壁面や道路を群れで移動する姿はこれまで以上に派手で、大都市を舞台にした本作ならではのスケール感がある。
Dolby Visionの効果もしっかり感じられる。
前2作のように黒を深く沈める方向から、暗部の階調を残して見通しを良くする映像へ変化しており、薄暗い場所でも背景の情報が失われにくい。
作品全体は落ち着いた明るさと色調で統一されているため、光源や炎を鮮烈に見せるタイプではないが、暗い街の中でも状況を把握しやすい。
フィルムグレインはほとんど感じられず、ノイズも非常に少ない。前2作と比べてもデジタル的でクリーンな印象が強く、一般的な現代大作映画に近い絵作りになった。
精細感、暗部階調、大規模なVFXのどれも高い水準で安定しており、派手さだけではなく見やすさもしっかり確保された、完成度の高い4K/Dolby Vision映像だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
一段と重みを増した表現が増えた。
迫力の点では申し分ない。
シリーズ通して素晴らしい。
飛来する前後の喧騒と静けさの対比が秀逸。
街を活かした表現の幅が増えている。
映像のスケールアップに合わせて、サウンドもシリーズで最も派手な方向へ進化している。
冒頭では、ニューヨークが日常的にどれほど騒音に包まれている街なのかを示す文章から始まり、その直後に人々の会話、車、サイレンなどが入り混じった大都市の喧騒が広がる。
そこからクリーチャーの襲来によって一気に静寂へ変わる落差が見事だ。
前作にも「音のある世界」と「静かな世界」の対比はあったが、もともと静かな田舎町とは違い、本作は世界有数の大都市。そのため、人の気配が消えた後に残るわずかな風や街の環境音が、より異様な静けさとして感じられる。
一方、派手な場面ではシリーズ最大級の音圧を見せる。
隕石状の物体の落下や軍による攻撃は重く、大量のクリーチャーが一斉に移動する場面では、低音とサラウンドが組み合わさって強烈な包囲感を生み出す。後方から一体が迫るというより、周囲のあちこちから音が押し寄せてくるため、時にはやかましいほどの密度だ。
Dolby Atmosによるトップスピーカーの活用も、前2作以上に分かりやすい。
ヘリや戦闘機が頭上を通過し、地下へ逃げ込めばその上をクリーチャーが走り回る。雷雨では頭上から激しい雷鳴が降り注ぎ、前後方向への移動も感じられる。単に高さを加えるだけではなく、地上、地下、空という舞台そのものを立体的に使った音場になっている。
聞きどころも非常に多く、序盤から終盤までサラウンドが活発に働く。
シリーズ初期にあった「どこにいるか分からないものが静かに迫る恐怖」は薄れたものの、今回は大都会の群衆が大量のクリーチャーに襲われるというモンスターパニックとして、別方向から音の迫力を最大限に引き出している。
それでも、すべてを鳴らし続けるわけではない。
人の姿が消えた街で風だけが微かに聞こえる時間から、クリーチャーの襲撃によって一瞬で音場が激変する。その静と動のメリハリはシリーズらしく、静かな場面があるからこそ、大音量へ切り替わる瞬間の緊張感もさらに強くなる。
デモ級のシーンがあるというよりは、全体を通してホームシアターで楽しみたい要素が高いレベルで揃っている。
シリーズの音響コンセプトを残しながら規模を大きくした、とても楽しいサラウンドサウンドだった。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
空から飛来
衝撃のインパクトと、混乱した雰囲気が素晴らしい。
ヘリを追いかけるクリーチャー
トップもサラウンドも非常に目立つ。
橋を爆破
上から響く戦闘機の音に爆破の重さは中々の迫力。
ヘリを追いかけるクリーチャーから、街中での大規模な襲撃。
トップもサラウンドも賑やかなクリーチャーの襲撃。
街中で追いかけられる
上はしっかり、後ろはもっとしっかり。地下の空気感も良し。
船着場へ
最後まで大群で走り回る迫力は衰えず。
総評
シリーズ3作目となり、舞台も主人公も大きく変化した『クワイエット・プレイス:DAY 1』。
今回は、すでに自らの死期が近いことを知っているサミラを主人公に据えたことで、危険を承知で進む行動にもきちんと理由が生まれている。そこへ偶然出会ったエリックとの友情、そして愛猫フロドが加わり、家族を中心に描いてきた前2作とはかなり違った雰囲気になった。
クリーチャーも単に襲ってくる存在ではなく、大量に行動する姿や独自の生態を感じさせる描写が加わり、シリーズを重ねるごとに世界観が少しずつ明確になっている。正体をすべて説明しないまま、それでも「どういう生物なのか」は以前より見えてきた。
作風も、静寂の中で一体のクリーチャーに追われる恐怖から、大都市を大量の個体が駆け回るモンスターパニックへ大きく変化。ホラーとしての怖さは薄れたものの、次々に危機が訪れるエンターテインメント性は高く、この方向性もかなり楽しめた。
そして映像と音声の完成度はシリーズでもトップクラス。
解像感の高い4K/Dolby Vision映像に、大量のクリーチャー、航空機、雷雨まで立体的に描くDolby Atmosが組み合わさり、ホームシアターとの相性は抜群だ。
人間ドラマをしっかり描きながら、シリーズの特徴だった「音」を使った演出をさらに派手な方向へ発展させている。そのためホラーが苦手な人でも比較的見やすく、シリーズの中でも幅広く楽しめる一本になったと思う。
さらに嬉しいことに、物語はまだ終わらない。
次の作品では、再び家族の物語へ戻るのか、それとも今作のように新しい人物と場所へ広げるのか。作品ごとに少しずつ方向を変えてきただけに、次にどのような世界を見せてくれるのか楽しみだ。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
