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あらすじ
長距離宇宙航行の任務に就いていたパイロットのミルズは、航行中の事故によって未知の惑星へ不時着する。
生存者を探す中で、彼は一人の少女コアと出会う。言葉も十分に通じない二人は、救助を求めて危険な土地を進むことになるが、その惑星には巨大な生物たちが生息していた。
限られた装備と時間の中、次々と迫る脅威をかわしながら、生き延びるための移動が始まる。
やがてミルズは、この惑星が自分の知る世界とは大きく異なる場所であることを知る。孤独な男と少女の関係を軸に、恐竜が生きる世界でのサバイバルを描いたSFアクション。
作品レビュー
『65/シックスティ・ファイブ』は、6500万年前の地球を舞台にしたSFサバイバル。最初はタイムスリップものにも見えるが、実際には未来人ではなく、別の文明圏からやって来た存在が地球へ不時着するという設定が面白い。
主人公ミルズを演じるのはアダム・ドライバー。普段の印象とは少し違い、髭を生やし、泥にまみれながら過酷な環境を進んでいく姿が意外とよく似合っていた。寡黙で疲れ切った人物だが、その内側には娘を失った喪失感があり、それが彼の行動を支える大きな理由になっている。
事故後に出会う少女コアとは言葉がほとんど通じない。それでも移動を続ける中で、身振りや行動を通して少しずつ信頼関係が生まれていく。ミルズの過去も重なり、二人の関係が疑似親子のように変化していくところが、本作の感情的な中心になっていた。
恐竜映画ではあるものの、『ジュラシック・パーク』のように多彩な恐竜を見せて楽しませる作品ではない。恐竜は基本的に、道中を阻む危険な生物として登場する。森、洞窟、沼地といった自然環境の中で突然襲ってくるため、アクション大作というよりホラー寄りのサバイバル映画に近い。
デザインも実際の恐竜復元を意識したものというより、クリーチャー的な怖さを優先した印象が強い。そこへ未来の武器やスキャン装置が加わり、原始的な世界と高度な文明の道具が同居する絵面がSF感をより強めていた。
設定自体は宇宙文明や6500万年前の地球というかなり大きなものなのに、物語は基本的に二人が目的地まで移動するという小規模な構成。派手な戦闘を連発するのではなく、「次に何が出てくるか分からない場所を進み続ける」緊張感の方を重視している。
そのため、恐竜大作を期待すると少し肩透かしを感じるかもしれない。ただ、上映時間は短めでテンポも良く、父性や喪失というテーマを挟みながら無駄なく進んでいく。終盤には災害的な要素も絡み、最後にはしっかり恐竜映画らしい見せ場も用意されている。
期待していた「大規模恐竜映画」とは少し違ったが、小規模なSFサバイバルとして見れば悪くない。コンパクトながら独自の設定と雰囲気を持った一本だった。
メタデータ
映像レビュー
暗所でも恐竜の質感まで見通せる安定した現代画質
とてもバランスの良い、現代的な高品質映像。
フィルム感やノイズはほとんど感じられず、全編を通して非常にクリア。未知の惑星のようにも見える6500万年前の地球は、森林や岩場、空の色まで鮮やかに描かれ、原始的な世界でありながら映像としてはかなり華やかだ。
恐竜たちもオーソドックスな姿から、少しクリーチャー寄りの変わったデザインまで用意されている。登場する種類自体はそれほど多くないものの、見た目の違いはしっかりあり、恐竜映画として十分に楽しめる。
VFXの完成度も高く、恐竜が背景から浮いて見えたり、合成っぽさを強く感じたりする場面はほとんどない。大作恐竜映画ほどの巨大予算ではないことを考えると、かなり健闘していると思う。
見せ場には暗い場面も多いが、視認性は十分。黒とのコントラストも強く、暗闇の中でも恐竜の肌模様やゴツゴツとした質感まできちんと確認できる。未来的な装備や照明の光もよく映え、終盤で隕石群が迫る場面では、オレンジ色に染まった空が非常に綺麗だった。
解像感そのものは最高峰とまではいかないが、近景から遠景まで大きく崩れることはなく、どの場面でも安定している。
目立った欠点がほとんどなく、大画面で観ても十分耐えられる水準をしっかり超えた、完成度の高い映像だった。
技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照
音声レビュー
小惑星の破片や恐竜の重みは良し。
上下にブレはあるが、かなりの迫力。
恐竜の方向感は適度に感じられる。
宇宙船とジャングルで、雰囲気は良い感じ。
隕石群をはじめ、細かに使用される。
映像と同様に、各要素が高いレベルでまとまったバランスの良いサウンド。
まず迫力は十分。恐竜の鳴き声、大型恐竜の足音、SFらしい銃器の射出音、爆発や衝突音まで、それぞれにしっかりパンチがあり、アクション場面では素直に迫力を楽しめる。
サラウンドもリア、トップ、低音を偏りなく使っており、包囲感はかなり強い。リアチャンネルでは、恐竜が周囲を動く場面や包囲されるシーンが特に分かりやすいが、それだけではない。
墜落後の船内では反響音や電子音が空間を作り、ジャングルでは虫や自然音が周囲へ広がる。派手な場面以外でも環境音を丁寧に配置しており、世界の中へ入り込ませる音作りになっている。
Dolby Atmosによるトップスピーカーは、隕石群、雷雨、船内のナビゲーション音声などで活用される。使い方自体は定番ではあるものの、どれも場面との相性が良く、不自然に高さを足している印象はない。
低音も大型恐竜や爆発でしっかり存在感を出し、サイズや重量の違いを感じさせる。恐竜ごとの鳴き声や動きにも差があり、SF要素とクリーチャー要素が音でもきちんと分けられている。
音のクリアさも良好で、細かな環境音から大きな効果音まで埋もれにくい。
ホームシアター向けとして満点級の派手さまではないものの、弱点らしい弱点が少ない、優秀なDolby Atmosサウンドだった。
聞きどころ
「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。
隕石群に衝突
宇宙船に激しくぶつかる音が全方位で。
恐竜と戦闘
SFっぽい銃声と集団で襲ってくる小型恐竜でちょっとサラウンド。
洞窟にて
雷の一発がジャンプスケア並み。脱出はサラウンドもまずまず。
脱出に向けて
隕石片が降ってくる中、大型恐竜との迫力のバトル。
総評
主要キャラクターはほぼ二人だけで、目的も「危険な土地を進み、脱出を目指す」という非常にシンプルな構成。その途中に恐竜がいる、という潔いほど分かりやすいSFサバイバルだった。
ミルズとコアはともに家族を失った喪失感を抱えており、言葉が十分に通じない中で少しずつ助け合っていく。物語としてはかなり王道だが、余計な要素を増やさず二人の関係に絞ったことで、短い上映時間の中でもテンポよくまとまっている。
恐竜たちは種類は多くないものの、小型から大型まできちんと見せ場があり、終盤には恐竜映画らしい盛り上がりも用意されている。
映像面は優秀で、恐竜の自然な合成や暗所表現は大作映画にも見劣りしない。音声もDolby Atmosをしっかり活用し、恐竜の動きや環境音、隕石群まで立体的に広がるため、ホームシアターとの相性はかなり良い。
評価はあまり高くなかったようだが、そもそも恐竜映画は制作コストも高く、現在では『ジュラシック』シリーズ以外の本格的な作品自体がかなり少ない。その中で、コンパクトな規模ながら恐竜をきちんと主役級の脅威として描き、最後までテンポよく見せてくれたことには十分価値があると思う。
大きな感動や強烈なカタルシスを残す作品ではない。それでも、ジュラシックシリーズ以外で楽しめる小粒な恐竜映画としては悪くなく、恐竜好きなら十分満足できる一本だった。
公式予告編
※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。
