メリダとおそろしの森

メリダとおそろしの森

Atmos初採用映画、母娘の絆を描いたピクサー作品

作品データ

作品名
メリダとおそろしの森
Brave
公開年
2012年
上映時間
93分
レビュー対象
Apple TV
映像仕様
4K/Dolby Vision
音声仕様
Dolby Digital Plus Atmos
当サイト評価
総合 8/10
音響 9/10
外部評価
IMDb 7.1 / 10
Filmarks 3.4 / 5
映画.com 3.3 / 5
他サービス
Prime VideoHDSDR5.1ch
Disney+4KDolby Vision5.1ch
Blu-rayHDSDR7.1ch
UHD Blu-ray4KHDR10Dolby Atmos

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STORY

あらすじ

スコットランドの王国に暮らす王女メリダは、弓の腕に優れ、自分の生き方を自分で決めたいと願う少女。

しかし母エリノア王妃は、王女としての責任と伝統を重んじ、メリダにふさわしい結婚を望んでいた。

ある日、結婚相手を決めるための競技会が開かれるが、自由を求めるメリダは母の意思に反発。

森へ飛び出した彼女は、不思議な魔法を操る老婆と出会い、自分の運命を変えるための力を求める。

ところが、その魔法によってエリノアの身に思いもよらない変化が起きてしまう。

限られた時間の中で元の姿へ戻す方法を探すメリダは、母とともに森を進みながら、互いの考えや家族としての絆に向き合っていく。

REVIEW

作品レビュー

原題は『Brave』。直訳すれば「勇気」だが、日本では『メリダとおそろしの森』というタイトルになっている。
ストレートに「勇気」とするよりも、作品の内容を想像しやすくした邦題として、なかなかうまく作られていると思う。

主人公のメリダは王女であり、許嫁を決めて結婚することを求められている。
しかし、活発で自由を望む性格ゆえに、伝統や王女としての振る舞いを重んじる母エリノアとは特に衝突が多い。

周囲から求められる「王女らしさ」や「女性らしさ」に反発し、自分の運命は自分で決めたいと願うメリダ。その姿を描いた、自分らしく生きるための物語だ。

結婚を迫られるところから始まるプリンセス物語ではあるものの、恋愛そのものがゴールではない。物語の中心にあるのは、メリダと母エリノアの関係であり、王族の話でありながら、ごく身近な親子の物語として見ることができる。

導入や物語の骨格自体は昔からある比較的シンプルなもの。そこへ魔女の力がプラスされ、思いもよらない出来事やドタバタが次々と起こっていく。

母エリノアも、ただ古い価値観を押し付けるだけの。王妃として王国のことを考え、母親としてメリダの将来を案じているからこそ厳しく接している。
そのため、どちらか一方だけが考えを改めるのではなく、反発していた母娘が互いを理解し、歩み寄っていくところも良かった。

さらに、メリダの三つ子の弟たちがとにかくいたずら好きで可愛い。単なる賑やかしではなく、要所ではしっかり活躍してくれるのも楽しい。

森や城、氏族、弓術、伝承や魔法といったスコットランドらしい世界観も作品の大きな魅力。
ストーリー自体は王道ながら、この独特の雰囲気によってしっかり個性が出ている。

「自分の運命を決める勇気を持て」というメッセージは、いかにもアメリカ作品らしい独立心が溢れている。

王族同士の争いといっても、周囲には理解のある人物が多く、婚約者を巡る騒動も実に平和的だし、反発を繰り返した母娘が最後には和解へ向かう展開も王道。

一方で、熊の描写はかなり迫力があり、凶暴さもしっかり感じられる。
それでも全体としては重くなりすぎず、家族の物語として最後まで楽しめるピクサーらしい一本だった。

SPEC

メタデータ

映像レンジ / 解像度 / アスペクト比
Dolby Vision / 3840×1606 / スコープ
輝度データ
最大 537nit / 平均 514nit(HDR10時参考)
映像ビットレート
最大 30.79Mbps / 平均 21.23Mbps
音声 / 音声ビットレート
Dolby Digital Plus Atmos / 770kbps
VIDEO

映像レビュー

CHECK POINT

メリダの赤毛に見る、進歩した複雑な毛髪表現

ピクサーらしい、綺麗で柔らかな質感の映像。

4Kではあるものの、めちゃくちゃな高解像感を前面に押し出すタイプではない。
これはピクサーというよりCGアニメ全般でもよく見られる傾向で、画面のすべてをシャープに見せるのではなく、遠景を少し柔らかくするなど、自然な奥行きを意識した映像になっている。

2012年の作品だが、この頃になると映像の細やかさや画面内のオブジェクト量も十分。
群衆や水飛沫のように情報量が増える場面でも、映像が乱れたりノイズっぽく見えたりすることはほとんどない。

本作からPixarの新しいアニメーション制作システム「Presto」が長編作品に導入された時期でもあり、キャラクターの表情や動きも非常に自然。さらに、メリダを象徴する大量の赤毛には高度なシミュレーション技術が使われており、複雑に絡み合いながら動く髪の表現は今見ても印象的だ。

Dolby Visionとの相性も良好。
特にメリダの鮮やかな赤毛は強く印象に残り、暗い場面でも色が沈まず綺麗に発色する。月明かりもかなり明るく表現されており、森でも城でも夜景は見通しが良い。
その一方で、火の光によって生まれる影は濃く深い。明るさを確保しながら陰影もしっかり作られており、ライティングの細かさを感じられる。

熊の毛並み、料理、城の床や調度品なども質感豊か。
ただし実写のようなリアルさへ寄せすぎることはなく、アニメーションらしい柔らかさを残しているため、作品全体の世界観が崩れない。

物語の舞台自体は城と森が大半を占め、それほど広範囲を移動する作品ではない。
それでも場面ごとの色彩や光、天候、背景デザインに変化があり、狭さを感じさせない映像の多彩さがある。

ファンタジー世界に合った色彩とデザイン、柔らかな質感を4KとDolby Visionでしっかり楽しめる、ピクサーらしい美しい映像だった。

技術仕様・マスター情報:IMDb Technical Specifications、Blu-ray.com、メーカー公開情報等を参照

AUDIO

音声レビュー

Low Frequency Effect 3.0

重いのは爆発くらい。

ダイナミックレンジ 4.5

クマが全て。

定位感・移動感 4.5

動きはかなり多めで、後ろも分かりやすい。

環境音 4.5

城と森だが、基本は賑やか。

トップ 4.0

映画を通して様々に活用される。

日本のDisney+では5.1ch配信のため、今回はDolby Atmosに対応したAppleTV版を視聴。

『メリダとおそろしの森』は、Dolby Atmosが劇場映画として初めて観客に提供された歴史的な作品でもある。そんな“Atmos第1号”という肩書きを持つ作品だが、単なる技術デモではなく、映画全体の音響として非常によくまとまっている。

ダイナミックレンジはかなり大きく、ピクサー作品の中でも迫力のある部類。特に熊の存在感は強烈で、その巨体や凶暴さが音からもしっかり伝わってくる。

セリフの定位も固定的ではなく、キャラクターが画面上を移動すると声も左右へ自然に動く。アニメーションらしく、画面と音を細かくリンクさせた作りだ。

魔女の周囲で鳴る不思議な音や、城内の賑やかな群衆、森の環境音など、マルチチャンネルを活かした演出も豊富。

そして肝心のAtmosも、トップスピーカーをきちんと使っている。
頭上を飛ぶ矢やカラス、少し高い位置から聞こえる物音、魔法、雷雨など、細かな音が高さ方向へ配置される。ただし「上から音を鳴らしている」と露骨に主張するタイプではなく、空間全体を構成する一つの要素として自然に溶け込んでいる。

サラウンドデザインそのものも非常に細かい。実写では成立しにくいような音の動きや配置も自由に使えるため、場面ごとに様々な方向から音が飛び交う。この辺りはピクサー作品らしい芸達者な音作りだと感じる。

唯一、低音はそれほど重くない。
雰囲気作りにはしっかり使われているものの、熊との戦いでもサブウーファーを極端に押し出すような作りではない。それでもダイナミックレンジそのものが広いため、迫力不足には感じない。

映像に負けない賑やかな音響、ファンタジーらしいBGMと効果音、そして細かなサラウンド表現。

Atmos初採用作品という歴史的価値を抜きにしても、サラウンド環境で楽しむ価値の高い、ホームシアター向きの音響だった。

SCENES

聞きどころ

ネタバレ注意

「聞きどころ」は見どころを含むシーンでもあります。
そのため「聞きどころ」には、シーン内容に関するネタバレが含まれます。
未視聴の方や事前情報を入れたくない方はご注意ください。
一方で、短時間で見どころを把握したい方、ネタバレを気にしない方には参考になる内容です。

17:40~27:20
サラウンド活用 包囲感

婚約者選び

とにかく賑やかにリアを使う。方向より包囲感。

31:00~36:00
サラウンド活用

魔女の家へ

魔法や刃物やカラスと、全体的なサラウンドで自然な使い方。

39:00~47:10
サラウンド活用

女王がクマに

さりげなく色んな方向で鳴らす、細かなデザイン。

59:00~1:02:30
迫力大 包囲感

邪悪なクマ

サラウンドはそこまでだが、空気感と迫力が良し。

1:10:00~1:19:50
サラウンド活用 終盤見せ場

決闘

逃げるくま、追う馬と犬、弓矢に雷雨、城での動き、本当にしっかり作ってる。

SUMMARY

総評

原題『Brave』が意味する「勇気」を象徴しているのは、もちろん主人公のメリダだが、見終わってみるとむしろ母エリノアの方が印象に残った。

王族を描いた物語でありながら、その根底にあるのは非常に身近な家族の話。
立場や考え方の違う親子がぶつかり、互いを理解していくという普遍的なテーマを、ファンタジーの世界にうまく落とし込んでいる。

守られることや恋愛を中心とした従来のプリンセス像から離れ、自分の人生を自分で選ぼうとするメリダの姿も、現代のプリンセス作品につながる方向性としてよく合っている。

そして本作は、Dolby Atmosが初めて劇場映画に導入された作品という、映画音響史における節目の一本でもある。

トップスピーカーを派手に鳴らすデモ級の音響というわけではないが、それでもサラウンドの作り込みは細かく、映像と音声のクオリティも申し分なし。ホームシアターとの相性は十分に高い。

日本のDisney+では古いピクサー作品に5.1ch配信が多く残っている一方、映像は4K/Dolby Visionへアップデートされている作品も多い。
今後、音声についてもAtmos対応が広がれば、こうした作品をより手軽に本来の立体音響で楽しめるようになるだろう。

安心して楽しめるピクサーらしい家族の物語でありながら、映画音響の歴史を語るうえでも外せない一本。

Atmosの始まりを体験する作品として、改めてチェックしてみるのも面白い。

当サイト評価
総合 8 / 10
音響 9 / 10

TRAILER

公式予告編

※予告編は本編とは画質・音質が異なる場合があります。

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